"「お前のために断ってやった」母の仕送りを7年捨て続けた夫" 第2話
『……え?』
受話器の向こうで、母が息を呑む音がした。
『拓さんが、そう言ったの?』
「言ってたよ! 私が配するからって……」
言葉が途で喉に詰まる。 胃のあたりが、たい氷で押し潰されたように痛む。
違う。 配なんかじゃない。
夫は最初から、母からの荷物を私に見せることすらなく、勝に突き返していたのだ。 私がの平の昼か、あるいは夫が先に帰宅していた曜の午に。 配達員に何を言って追い返したのかはわからない。 けれど、夫のによって、母のいはすべて「差への返送」という無質なハンコを押されて、野へ送り返されていた。
『……そうだったの』
母の声が、かすかに震えていた。
『ごめんね、真帆。私、あなたが本当に嫌がってるんだとって……話するのも、なんだか邪魔をしちゃうんじゃないかって怖くて……』
「どうしてお母さんが謝るの? お母さんは何も悪くないのに!」
涙がせりがってきて、界が滲む。 申し訳なさと、やりのないりで、呼吸が浅くなる。
私は母に、仕事が忙しいからと自分から連絡するのをに度の事務な話で済ませていた。 「元気?」「変わりないよ」「そっちも体に気をつけてね」。 そんな表面な数分の会話で、親孝をした気になっていた。 その裏で、母がどんないで突き返された箱を受け取っていたかもらずに。
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「……今回のは、どうして送ってくれたの?」
をすすりながら尋ねると、母はしのを置いて、躊躇いがちに言った。
『箱のに、を入れてあるの。……読んでもらえれば、わかるとうから』
話を切ったあと、私は玄関に座り込み、段ボールのテープをカッターで切り裂いた。
箱をけた瞬、懐かしい匂いが腔を突いた。 干した藁と、の匂い。そして、わずかに酸を帯びた、あの野沢菜漬けのり。
番には、聞に包まれた野菜。のついた根と、派なネギ。 そのから、ジップロックにに入れられた漬物のパックと、丁寧に編まれた毛糸の靴がてきた。え性の私のために、母が毎編んでくれていたものだ。
そして、箱の隅に、茶の封筒が挟まれていた。
『真帆へ』
母の几帳面な字でかれた宛名。 封を破り、つ折りにされた便箋を広げる。
『真帆、元気ですか。 拓さんから、あなたが毎忙しく働いていると聞いています。 迷惑かもしれないといつつ、どうしても伝えておかなければならないことがあって、このを入れました』
の冒を読んだだけで、胸が苦しくなる。 「迷惑かもしれない」なんて、実の娘にをくときに使わせる言葉じゃない。
便箋の文字を追うにつれて、私の血の気が引いていった。
『お父さんのことですが、の頃から腰の痛みがひどくなり、材の加の仕事をほとんど畳むことになりました。
今は力仕事をやめて、自宅で過ごすが増えています。活に困っているわけではないので、配しないでね』
……父が仕事を? そんなこと、度も聞いていなかった。 先の話でも、母は「お父さんも相変わらずよ」と笑っていたのに。
さらに、は続いていた。
『それから、裏のれのことです。 築数も経って漏りがひどく、先の台で柱が傷んでしまって、所の方にご迷惑をかけるに解体することにしました。 あそこには、真帆が子どもの頃に使っていた学習机や、描いた絵、本がたくさん残っています。 拓さんには以、「真帆は昔のものに執着はないし、忙しくて野まで見にくもないから、全部処分していい」と言われました。 でも、あなたのいのものを、私の判断だけで勝に捨ててしまうのが、どうしてもできなかったの。 もし、しでもが取れるなら、度見に帰ってきませんか。 いらないものなら、あなたので捨ててほしいのです。 無理なら、このは破いて捨ててくださいね』
便箋を握りしめる指先が、刻みに震えていた。
……執着がない? ……忙しくて見にくもない?
夫は、っていたのだ。 実のれが解体されることも、そこに私の荷物が残されていることも、父の体の具が悪くなっていることも。 すべてをったで、私に言も相談せず、母に向かって「全部処分していい」