"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第12話
の検代とボーナス払い、会社の付きいとみ代で消えると、結婚に自分で言っていましたよね」
亮太の言葉が喉に詰まった。
私は用の最段、赤枠で囲んだ欄をトントンと指先で叩いた。
「もし、宮本を維持するために本当に毎万円が必だというなら、族全員で分担するのが筋です」
「分担……?」
子の眉がつりがる。
「はい。ここに分担案の空欄を作ってきました」
私は胸ポケットから油性ボールペンを抜き取り、座卓の央に置いた。
「亮太さん、あなたのハリアーを放して軽自に変えれば、万円は浮きます。趣のゴルフとみ代を削れば、あと万円せますね。計万円」
亮太の顔が引き攣った。
「お義父さん、倉庫のパート代とから、いくら拠できますか? 族の黒柱として、万円はせますよね」
正男はビクッと肩を揺らし、湯呑みを握ったまま目を伏せた。
「お義母さん、清掃のパート代と、ご自の老資からいくらせますか? 万円せますか?」
子の顔が、りで真っ赤に染まっていく。
「そして輔さん」
私は最に、ツナギを着た次男の目を正面から射抜いた。
「あなたが始めるカーコーティングのから、毎いくら実に入れられますか? 自分のの賃や械代をに丸投げせず、最でも万円は稼いで実を支えるのが、27歳の成の責任ではないですか?」
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輔が息を呑み、子代わりにしていた座布団から腰を浮かせた。 「いや……俺は、まだで……売なんてるわけないし……」
を支配したのは、逃げのない沈だった。 計の振り子の音だけが、カチ、カチと無慈に響く。
誰も、ペンを取ろうとしない。 誰も、円の数字すらき込もうとしない。
私はえ切った声で、トドメの撃を落とした。
「ここにいる全員が、自分のを放したくない。自分のを守りたい。自分のパート代を削りたくない。リスクを背負って働きたくもない。全員が自分のには指本触れさせないのに、なぜ、のから嫁いできたばかりの私の料と貯蓄だけが、全額差しされる提になっているんですか?」
「……っ!」
沈黙を破ったのは、子の絶叫だった。
「いい加減にしなさいよ!!」
バンッ! と両で座卓を叩きつける音。 正男の湯呑みが倒れ、めた緑茶がA4の試算表のに無惨に広がっていく。
「誰がのですって!? 宮本の籍に入った以、あんたのも宮本のでしょうが! なにが試算表よ! なにが破綻よ! 族を支えるのに損得勘定を持ちすなんて、なんて浅ましい女なの!」
子は狂乱したようにちがり、濡れたをくしゃくしゃに握りつぶしてへ投げ捨てた。
「お父さん、見てやってよ! この女、男の嫁のくせに、舅と姑に向かってをいくらすか指図してきたのよ! 恩らずにもほどがあるわ! 亮太、こんな気な女、今すぐビンタのつでも張って躾け直しなさい!」
けれど、亮太はかなかった。 けなかったのだ。
母親のヒステリーの横で、亮太は青ざめた顔で唇を噛み締め、刻みに貧乏ゆすりを繰り返していた。 現実の数字を突きつけられ、自分の傲な甘えをのに晒された男の、惨めな沈黙だった。
「……もう、結構です」
私はちがった。 の痺れはあったが、ふらつくことなく、しっかりと畳を踏みしめた。
「話しいにならないことは、よく分かりました」
「待ちさいよ、菜穂さん!」
子が叫ぶ。
「逃げる気!? 族会議はまだ終わってないわよ! 嫁の義務を果たさないなら、親戚にあんたの悪を言いふらしてやるからね!」
私は子を度だけ、氷のような線で見ろした。
「どうぞ。そのは、先私の座から無断で横領された万円の送記録と、輔さんの材購入の領収、そして結婚に亮太さんが『親には円も仕送りしていない』と嘘をついていた証拠の数々を、親戚全員にお配りしますので」
子の息が、喉の奥でヒッと止まった。
私はブリーフケースのファスナーを閉め、度も振り返ることなく玄関へ向かった。 背から、輔の「おい、兄貴、どうすんだよこれ……」というけない呟きと、子の狂ったような喚き声が追いかけてきたが、古い引き戸をピシャリと閉めた瞬、すべてはい過のノイズに変わった。