"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第8話
「あのドイツ製のスチーム洗浄、マジでやばいんすよ! これ台あれば、輸入の革シートの汚れも発で落ちるんすから。潮にはまだこのレベルの材置いてるガレージないんで、勝ちっすね」
自げにスマートフォンの写真を見せてくる輔。 画面のには、ピカピカにる型の洗浄と、そのでピースサインをする輔の姿があった。
「すごいですね」
私は穏やかな笑顔を作り、相槌を打った。
「これ、かなりかったんじゃないですか?」
「まあ、定価だと万くするんすけど、りいの伝で万ポッキリにしてもらったんすよ! ちょうど先旬にが入ったんで、即決しました!」
指先がピクリとねる。 先旬。 私が振り込んだ、まさにそのタイミングだ。
「そうなんですね。でも、オープンの設備投資って、結構まとまったおが必ですよね。敷とか、賃とか……輔さん、ご自で貯めてらしたんですか?」
私の問いに、輔はあっけらかんと笑った。
「いやいや、俺がそんな持ってるわけないじゃないですか! の辞めてから半くらいバイト活だったし。全部、母ちゃんがしてくれたんすよ」
「お義母さんが?」
「そうっす。母ちゃん、パートのなんてたかがれてるのに、どっかから面してきてくれて。とりあえず材代の万と、最初の保証払ってくれたんすよ」
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メロンソーダのストローをズズッと吸いながら、輔は何の疑いもなくペラペラと喋り続ける。
「でも、これからの運転資はどうするんですか? ガレージの賃だって毎万以かかるでしょうし、費やケミカルの仕入れ代だって……」
「あー、それも母ちゃんが『配すんな』って言ってたんで」
輔はニヤッと笑った。
「『兄貴が結婚すれば、なんとでもなる』って」
ドクン、と臓が嫌な音をてた。 の奥で、血液が逆流するような轟音が響く。
「……お兄さんが結婚すれば?」
「そうそう。兄貴の嫁さん、の医療器メーカーでしょ? ボーナスもガッツリるし、独代の貯もめちゃくちゃあるって。母ちゃんが言ってたんすよ。『亮太の嫁は真面目だから、毎活費として万くらい実に入れさせれば、おのの賃も費も全部そこから回せる』ってさ!」
喉がカラカラに渇いていく。 呼吸が浅くなり、胃の底に氷の塊を落とされたような覚が全を支配する。
「……お義母さんが、結婚からそう言っていたの?」
「ええ。プロポーズするくらいからかな? 母ちゃん、兄貴にずっとハッパかけてたんすよ。『輔のを軌に乗せるためにも、しっかり稼ぎのある女を捕まえなさい』って。兄貴も『任せとけ、菜穂は俺の言うことなら何でも聞くから』って言ってたし」
輔は、自分が何をにしているのか、その言葉がどれほどの凶器であるのかを全く理解していなかった。 彼にとっては、族が自分を甘やかし、都のいい誰かがを運んでくることは、呼吸をするのと同じくらい当たりの常なのだ。
「菜穂さん、マジで謝してます! 兄貴と結婚してくれてありがとうございます! 俺、が軌に乗ったら、菜穂さんのもタダでコーティングするんで!」
悪気のない、屈託のない笑顔。 それが、何よりも残酷だった。
バッグのに入れたスマートフォンの録音ボタンは、確実に作していた。 テーブルので、私は自分の膝を、爪がい込むほどく握りしめた。
「……そう。よく分かったわ」
私は伝票をに取り、ちがった。
「え、もう帰るんすか? これからの写真、もっと見せようとったのに」
「仕事の話が入ったから。輔さん、お茶代、置いておくね」
千円札をテーブルに滑らせ、私は振り返ることもなくデニーズをた。
自ドアをた瞬、アスファルトの照り返しが目に染みた。 吐き気を抑えるために、く、何度も息を吸い込む。
プロポーズのから。 私が亮太と歩んだのい、将来について語りった夜、お揃いで買ったマグカップ。 そのすべてが、このにとっては『輔のガレージの資調達計画』の環に過ぎなかったのだ。
元が崩れ落ちそうなほどの屈辱と憤が、胸の奥底から噴りしてきた。