"入籍三日目に渡された「毎月30万」の振込先" 第4話
私が汗垂らして働いて貯めたおを、あなたは嘘をついて奪ったの」
「横領だと……!? ふざけんなよ!」
亮太の顔が、侮蔑とりで醜く歪んだ。
「たかが万でガタガタ騒ぎやがって! 俺の親を犯罪者扱いする気か!? 誰のおかげでこの綺麗なマンションにめてるとってんだ! 俺の稼ぎがあるからだろうが!」
「あなたの稼ぎだけじゃ賃も払えないから、私の名義で連帯保証もてて契約したんでしょう」
事実を突きつけると、亮太は悔しそうに歯ぎしりをした。 そして、吐き捨てるように言った。
「……わかったよ。もういい。おがそんなにケチでの狭い女だとはわなかった。母さんの言う通りだったな。に細かくて、夫をてることもできない、げのない女だ」
その言葉を聞いた瞬、私のので何かが音をてて千切れた。
しみではなかった。 絶望ですらなかった。
ただ、目のにいるこの男に対して、片のも、未来への期待も、完全に消滅した覚だった。
「わかった」
私はく答えた。
「何がわかったんだよ」
「話は終わり」
私は踵を返し、寝へ向かった。 背で亮太が「おい! 無すんなよ!」と鳴っているのが聞こえたが、度も振り返らなかった。
ウォークインクローゼットから、まだ荷解きしていなかった型のスーツケースを引きずりす。
広告
に入っていたのは、私の私物だ。
分証。マイナンバーカード。 会社の健康保険証。 独代から使っているの通帳とキャッシュカード、登録実印。 帳、パスポート。 そして、仕事用のスーツ着とノートパソコン。
際よく、切の無駄なく荷物を詰め込んでいく。 指先はまだたかったが、のは驚くほど静かで、研ぎ澄まされていた。
ジッパーを気に閉める。
ガラガラとキャスターを転がしてリビングに戻ると、亮太は腕を組んだまま、仁王ちで玄関への通を塞いでいた。
「おい……何してんだよ、それ」
「てく」
「は? てくって、どこへだよ」
「私の部」
亮太が瞬、虚を突かれたような顔をした。
「……おの部? 解約しただろ」
「ち会いは来週末の予定だった。退の取り消しがきくか、管理会社に今から確認する」
私の独代の部は、蕨駅くのワンルーム。 敷清算の続き、鍵の返却は末の予定になっていた。 まだ、にう。 物理な退を完全に塞がれるに、この異常な空から脱しなければならない。
亮太の顔から血の気がサーッと引いていくのが分かった。 だが、それは反省からではない。 所の目と、世体への恐怖からだった。
「待てよ! おい、馬鹿なことすんな! 結婚してで嫁にてかれたなんて、親戚や所にられたらどうすんだよ! 俺のはどうなるんだ!」
「私のったことじゃない」
「菜穂!」
亮太が私の腕を掴もうとを伸ばしてきた。 私はそれを、スーツケースの持ちで鋭く払いのけた。
バシッ、と鈍い音が響く。
亮太が痛みに顔をしかめ、怯んだ。
「触らないで」
私はく、けれど部の隅々まで通る声で言い放った。
「その万の使い、それから昨の万の求。全部、筋てて面で説して。それができないなら、度とあなたの顔を見る気はないから」
チェーンをし、玄関ドアを押しける。 朝のたい川のが、照った頬を叩いた。
「おい! 戻れよ菜穂! おい!!」
背で響く声を置きりにし、私はオートロックの自ドアをくぐり抜けた。 度も、ろを振り返ることはなかった。
蕨のワンルームマンションは、埃の匂いと、がらんとした気に包まれていた。
カーテンも具もすでに運びしたの、フローリングの。 私はスーツケースを壁際に置き、管理会社に話を入れた。
『宮本様……あ、旧姓の林様ですね。退のキャンセルですか? 次の入居申し込みはまだ入っておりませんので、契約の継続続きを取っていただければ、そのままおまいいただけますよ』
話の担当者の落ち着いた声を聞いた瞬、膝から力が抜け、私はそのにへたり込んだ。
違約と再契約の数料はかかる。
けれど、む所はある。 あの男と、あの族のの届かない、私だけのがまだここにある。