"無職と笑う夫が盗んだ、私のデザイン" 第13話
夫がダイニングの皿をに投げつけたのだ。
「てったら度と敷居を跨がせないからな! 悔するのはおだ! 銭も活費なんか渡さないぞ! 野垂れね!」
私は度も振り返らなかった。
チェーンをし、玄関のいドアをける。 夜のたい空気が、照った頬を撫でた。
ドアが閉まり、オートロックのカチャリという子音が響いた瞬、私の背筋から、い鉛の塊が抜け落ちていくような覚があった。
翌朝、午分。
京・本にある堅品メーカー、株式会社タイヨーフーズの本社ビル。 ガラス張りの徹なエントランスを抜け、私は階の特別会議へと向かっていた。
濃紺のセットアップスーツに、黒の革靴。 髪をろでつに束ね、背筋を伸ばして歩く私の隣には、直子さんと、彼女の事務所の顧問弁護士である先がついてくれていた。
「美穂、顔いいじゃない」
直子さんがエレベーターので微笑んだ。
「昨夜はよく眠れました。あそこをられて、本当に息ができるようになった気がします」
「それでいいのよ。今はあなたの作品を取り戻す。何も怯む必はないわ」
階のな目調のドアのにつ。 案内係の総務部員が礼し、ドアをけた。
会議の央には、掛けのい楕円形のテーブルが置かれていた。
広告
座には、厳格な面持ちのコンプライアンス統括部と、タイヨーフーズの法務部課。 その隣に、い表を崩さない田部。
そして座の端に、夫が座っていた。
夜にして歳老け込んだような顔だった。 ヨレヨレのシャツに、歪んだネクタイ。 目のには濃い隈が張り付き、テーブルので両を固く握りしめている。
私が入した瞬、夫の体がピクリとねた。 その瞳には、恐怖と、「頼むから余計なことを言うな」という必の懇願が入り混じっていた。
「お忙しいご労いただき、ありがとうございます。どうぞお掛けください」
コンプライアンス部が々しくをいた。
「本、営業企画部・佐藤也社員による、ナカジマ・フードホールディングス様向け提案資料『季の卓』における、著作権侵害および正流用の疑惑について、当事者ち会いのもとで事実確認をいます」
部の図で、夫が促された。
「……佐藤社員。改めて、このデザインの制作経緯を説しなさい」
夫は掠れた咳払いをし、震える声で話し始めた。 元のメモを握りしめ、度も私の方を見ようとしない。
「はい……。私から、事実を申しげます。あのデザインの基本コンセプト、ならびにターゲット層の設定、商品パッケージの構成案は、すべて私が営業の現覚から考案したものです」
夫は必に声を張りげた。
「妻には、私ののにあるイメージを具現化するための、いわば『作画アシスタント』として伝ってもらいました。夫婦のに基づき、庭内での共同作業としてめていたものです。決して、無断流用などではありません」
テーブルの向かいで、直子さんが呆れたようにさくを鳴らした。
夫の弁解は止まらない。
「しかし、先週の還暦祝いの席で、私活の些細な諍いがあり、妻が突発にになってしまいました。その私怨から、島部に対して『盗用された』と虚偽の主張をい、が社を混乱に陥れたのです。私としては、妻ののケアを怠った点については反省しておりますが、企画そのものは私の主導による社内業務の環であり……」
「佐藤さん」
弁護士が、静かにその言葉を遮った。
「その『指示』による制作のやり取りを証する、客観な記録はしますか? 指示、ラフスケッチ、メールの履歴、メッセージアプリのログなど、何つ提されていないようですが」
「そ、それは夫婦ですから! のでで伝えていたんです! 記録がないからといって、私のアイデアでないという証拠にはならないはずです!」
夫が声を荒らげる。 見苦しいまでの掻きだった。
「分かりました」
私は子から静かにちがった。
元に持参したMacBookをき、会議の型モニターに繋ぐ。 画面が切り替わり、精細な作業画面が映しされた。