"無職と笑う夫が盗んだ、私のデザイン" 第8話
私がをげると、私の隣に座った女性が名刺を差しした。
「初めまして、島様。美穂さんの元同僚で、現デザイン事務所を経営しております藤田と申します。本は美穂さんの代理およびアドバイザーとして同席させていただきました」
先輩の藤田直子さんだった。 昨夜の来事を話で相談したところ、「でっちゃダメ。ビジネスのなんだから、プロとして第者をてなさい」と、忙なを縫って駆けつけてくれたのだ。
島部は直子さんの名刺を受け取り、丁寧に礼した。
「藤田さんですね。著名なアートディレクターの方に同席していただけてい。単刀直入にお話しします」
島部はテーブルのに、黒い革のバインダーを置いた。
「が社は、先週提された佐藤也さんの会社からの提案を、今朝付けで正式に保留といたしました」
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
「美穂さん。私は昨夜、あなたのポートフォリオサイトと、過の掛けられたパッケージを改めて精査しました。あの『季の卓』のコンセプト……都会で孤しがちな共働き世代に、を通じて季の移ろいをじてもらうという。あれは、現でをかしていないにけるものではありません」
島部は私をまっすぐに見つめた。
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「ですが、ビジネスは信頼とコンプライアンスがすべてです。佐藤也さんは社内会議で、あのデザインを『自社の営業企画部がゼロから発した』と報告に記載していました。もしが社がこのままプロジェクトをめれば、者の権利を侵害した商品を世にすことになりかねない」
「当然です」
直子さんが横から毅然とした調でをいた。
「美穂、例の資料をお見せして」
私は頷き、鞄からタブレット端末と、印刷したいファイルを取りした。 テーブルのに広げる。
「島様。これが『季の卓』の初期ラフスケッチから、グリッドシステムの設計、彩設計の変遷を記録した制作ログです。すべてのデータには、独政法のタイムスタンプが刻印されています」
ページをめくる。 鉛で描かれた何パターンものロゴの骨格。 本の伝統である『鳥の子』や『川鼠』のCMYK値の指定。 の照でどのように見えるかをシミュレーションした展図。
島部は息を呑み、鏡をして枚枚の資料に見入った。
「……素らしい。ここまで緻密に設計されていたとは」
「夫が社内で提したIllustratorデータは、私の作業用SSDから無断でコピーされたものです。夫自にグラフィックソフトを操作するスキルはありません。レイヤーの構成を見れば、私が組んだものだと目で分かります」
私は島部の目を逃げずに見つめ返した。
「私は夫の会社に、このデザインを譲渡した覚えも、使用を許諾した覚えもありません。内だからと曖昧にして、誠実な形で世にされることは、デザイナーとして到底受け入れられません」
ラウンジに、よい沈黙が流れた。
島部はく息を吐き、バインダーを閉じた。
「よく分かりました。美穂さん、が社の向をお伝えします」
島部の声に、確かなが宿った。
「が社は、佐藤也さんの会社を経由した『季の卓』のプロジェクトを、完全に撤回します。あの会社とは、本件に関する切の契約を結びません」
臓がドクンと鳴った。
「そので——」
島部は鞄から、別の類を取りした。
「佐藤美穂さん。あなた個と、直接、ブランド顧問およびパッケージデザインの業務委託契約を結びたいと考えています」
目のに差しされたのは、正式な業務委託の仕様だった。
「期は。契約は初期発費として百万円、そのの監修費として額万円をお支払いします。もちろん、パッケージには『Design: Miho Sato』のクレジットを記していただきます」
「……え」
息が止まりそうになった。 隣で直子さんが、誇らしげにさく頷いている。
「美穂さん、あなたの技術には正当な価値がある。それをパジャマの落きなどと呼ぶようなに、あなたの未来を売りしてはいけない」
島部の言葉が、え切っていた私のに、じんわりと温かく染み渡っていった。