"無職と笑う夫が盗んだ、私のデザイン" 第4話
あれは、プロ用のデザインデータをかなければ絶対にに入らない、制作の裏側そのものだった。
「どうして……」
臓が鐘を打つ。
斎のドアにづくと、から夫の押し殺したような、焦り切った声が漏れ聞こえてきた。
「……おい! 頼むから今すぐサーバーのアクセス履歴を確認してくれ! 社内共フォルダにげたプレゼン資料、初稿の作成者名はどうなってる?! 変えられないのか?! 何とかしろよ、曜の朝で田部に呼ばれてるんだよ!」
話の相は、夫の部署の輩だろうか。 夫の必な懇願と、苛ちに満ちた声が続く。
「いいからやれ! 俺の昇がかかってんだよ! 島が勝に騒ぎててるだけで、内の作ったものなんだから法な問題なんかないはずだろ?! ……クソッ!」
乱暴に通話が切れる音がした。
しばらくして、斎のドアがき、夫がてきた。 ネクタイを緩め、髪を振り乱した夫は、廊にっていた私を見るなり、憎悪に満ちた目で睨みつけてきた。
「……見てんじゃねえよ」
夫は私を突きばすようにして洗面所へ向かい、シャワーを浴び始めた。 激しい音が響き渡る。
今しかない。
私は息を殺し、け放たれたままの斎へを踏み入れた。
デスクのには、夫の会社用のノートパソコンがかれたまま放置されていた。 画面のには、スリープを防止するアプリが作している。
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マウスに触れると、画面がるくなった。
デスクトップの片隅に置かれた規フォルダ。 フォルダ名は『季の卓_社内提』。
指先が微かに震えるのを抑えながら、ダブルクリックする。
フォルダのに並んでいたファイル名を見た瞬、全の血の気が引いていくのをじた。
そこにあったのは、PDFファイルだけではなかった。
.ai。 Adobe Illustratorの、完全な作業データ。
ファイルをく。 画面に広がったのは、紛れもなく私が構築したアートボードだった。
レイヤーの分け方、私がいつも使う独自のレイヤー命名規則。 『cut_line_ver3』『color_base』『kanji_outline』。
そして、画面の隅に配置された、私が個に契約して購入した商用フォントののアウトラインデータ。
夫がデザインソフトを扱えるはずがない。 専識のないが、ゼロからこれをいて編集することなど能なのだ。
線を落とすと、パソコンのUSBポートに、見覚えのある型のSSDが差し込まれていた。
私がリビングの作業机の引きしにしまっていた、過のアーカイブ用付けハードディスクだった。
「……盗んだのね」
声が震えて、掠れた。
夫は、私がスーパーへ買い物にっているか、あるいは実に帰っていた隙に、私のデスクからハードディスクを持ちし、パスワードのかかっていない作業用フォルダから、の制作データを丸ごと自分のPCにコピーしていたのだ。
Webの画像を真似て作ったのではない。 私の汗とと技術が詰まった「原データ」そのものを、横領していた。
背で、カチャリとドアのく音がした。
「おい。何勝にのパソコン見てんだよ」
振り返ると、バスタオルを首にかけた夫が、濡れた髪のまま仁王ちしていた。 その目は、罪悪のかけらもなく、獲物を奪われそうになった獣のように濁っていた。
「……これ、私のデータよね」
私はモニターを指差し、静かに言った。 声が震えないよう、奥歯をく噛みしめる。
「あなたが島部に見せた企画。私のハードディスクから、無断でコピーしたでしょう。このIllustratorのファイル、私が何週もかけて作ったものよ」
夫は瞬、怯んだように線を泳がせた。 だが、次の瞬には元を歪め、傲な笑みを浮かべて私のにちはだかった。
「それがどうしたっていうんだよ」
「……は?」
「どうしたって聞いてんだよ。減るもんじゃねえだろ」
夫はデスクに片をつき、私を見ろした。 その顔には、連れ添ったパートナーに対する敬など、微もしなかった。
「おさ、自分がどれだけ恵まれてるか分かってんの? で気楽にパソコンいじって、好きな絵描いてさ。そのデータを俺が会社のプレゼンに使ってやったんだぞ。むしろ謝しろよ」
「謝……? の仕事を盗んでおいて、何を言ってるの?」
「盗んだ?! 聞きの悪いこと言うな! 俺たち夫婦だろ?! 夫婦のものは共財産だろうが!」