"婚約破棄を告げた瞬間、義父母から謎の80万円を請求された" 第12話
たい悪寒が背筋をった。
「耶さんは、どうされたんですか」
「喧嘩したわよ。ふざけないでって叫んで、夫の実にもをげて、半実と絶縁した。父さんは世体を気にして『親の顔にを塗るな』って鳴り散らしてきたけど、夫がに入って完全にシャットアウトしてくれたから、なんとか縁を切らずに距を置くことで決着をつけたの」
耶さんは、きの80万円の請求を指先で弾いた。
「この産代の16万円も、羽毛布団の12万円も、全部見覚えがある。母さん、親戚ので『気の利く派な母親』でいたいのよ。級な引き物を配って、『うちの息子が派に結婚しました』って見栄を張りたいの。そのツケを、全部『ふたりのため』って名目で結菜ちゃんに回してるだけ」
耶さんの言葉は、私が抱いていた違をひとつ残らず言語化していった。
これは、偶発な事故ではない。 松本という閉ざされた王国ので、繰り返されてきた病理そのものだった。
「……じゃあ、健介は」
喉がカラカラに乾いていた。
「健介は、お姉さんののことをっていたんですか?」
耶さんは苦い表で目を伏せた。
「ってるわよ。でもあの子は……末っ子の男で、ずっと母さんに甘やかされて育ってきたから。学の学費も、就職活のスーツも、暮らしの賃も、全部母さんが先回りして用してくれたの。
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健介にとって、母さんの過干渉は『煩わしいけど、乗っかっていれば番楽なレール』だったのよ」
「……楽なレール」
「そう。自分で責任を取らなくていいから。母さんの言う通りにして、横で適当に頷いていれば、おもしてもらえるし波もたない。……だからあの子、自分の痛みを避けるためなら、平気で隣のを差しすのよ」
臓を素で握りつぶされたような衝撃だった。
健介のあの態度。 『母さんも悪気があるわけじゃないから』 『おが敏になりすぎなんだよ』 『俺たちの将来のために、今回だけしてくれ』
あの言葉の裏にあったのは、私への気遣いでも、族へのでもなかった。 ただ、自分が母親と衝突して傷つくのが怖いから、私に痛みを肩代わりさせようとしていただけなのだ。
「結菜ちゃん」
耶さんが、私のをテーブル越しにそっと握った。 そのは温かかったけれど、私の胸のたさは消えなかった。
「あの子ね、結菜ちゃんと付きうにも、、結婚寸までいったがいたの」
「……え?」
「健介、言ってなかった?」
首を横に振る。 『価値観がわなくて別れた』としか聞いていなかった。
「くらいよ。里さんっていう、護師さんだった。すごくしっかりした優しいだったわ。でも、母さんがやっぱり同じことをしたの。『夜勤がある仕事なんて、松本の嫁として失格だ』『もっとにいられる仕事に変えなさい』って干渉し始めてね。
そのも健介は、里さんに『母さんにわせて転職してくれ』って頼んだのよ」
乾いた笑いが、喉の奥から込みげてきそうだった。
「里さんは賢いだったから、すぐに婚約指輪を叩き返してっていったわ。……あの子、何も学んでなかったのね。また同じことを、今度は結菜ちゃんに繰り返したんだわ」
目のの景が、音をてて崩れていくようだった。
。 私が健介と積みねてきたは、何だったのだろう。 彼は最初から、私というを見ていたわけではなかった。 母親の支配という檻のに、しく入ってくれる従順な代わりを探していただけだったのだ。
「耶さん」
私はゆっくりと息を吐きし、クリアファイルをカバンにしまった。
「教えてくださって、ありがとうございます。本当によかった」
「……結菜ちゃん?」
「もしこれをらなかったら、私、どこかで『私がもっと器用にち回っていれば』って、自分を責め続けていたかもしれません」
自分の選択は、違っていなかった。 あの夜、婚姻届をカバンに仕い直した私の直は、私自の尊厳を守るための正当防だったのだ。
耶さんは寂しそうに微笑み、さく頷いた。
「引き止める権利なんて、うちの族の誰にもないわ。……母さんたちのこと、徹底に突っぱねていいからね。