みかん小説
本棚

"婚約破棄を告げた瞬間、義父母から謎の80万円を請求された" 第6話

と笑っていたのに。

「父さんのあの作業着が、みっともなかったのかい?」

父が、顔をげて私を見た。 その瞳に浮かんでいたのは、りではなかった。 ただひたすらに、娘の幸せを自分のせいで壊してしまったのではないかという、い怯えと悔だった。

「ごめんな、結菜。父さんが、もっとちゃんとしたサラリーマンで、派なスーツを着ていけるような仕事だったら、おがそんなに言われることもなかったのにな」

「……やめてよ」

界が完全に滲んだ。 膝のに置いた拳に、ボタボタと涙がこぼれ落ちる。

「やめて、父さん。なんで父さんが謝るの? 恥ずかしいことなんて、何ひとつないじゃない!」

声が震えて、うまく息が吸えない。

「父さんが汗流して、油まみれになって働いてくれたから、私は学までけたんだよ! 度だってご飯に困ったことなかったし、お弁当だって毎作ってくれたじゃない! それを……何の関係もないあのたちに、なんでそんなこと言われなきゃいけないの!?」

父は困ったように眉をげ、ポケットから使い古したハンカチをして私のに握らせた。

「でもな、結菜。結婚は、ととの付きいだからな。父さんのせいで、おが向こうので肩の狭いいをするのは……」

「そんな、かない」

きっぱりと言い切った。 涙をハンカチで乱暴に拭い、父の目をまっすぐ見つめ返す。

広告

「入籍は、やめた。健介とも、もう終わりにする」

父は息を呑んだ。

「……本当に、いいのかい? も付きって、仲良くやってきたんだろう。健介くんともう度、ふたりだけでよく話しったらどうだ」

「話しえないよ」

乾いた笑いが漏れた。

「健介はね、その横で黙って聞いてたの。『母さんも悪気があって言ってるわけじゃないから、おがしろ』って。あいつにとって、私が傷つくことより、自分の母親の嫌を損ねないことのほうがずっと事だったの」

そこまで言った、カバンのでスマートフォンがく震えた。 また義母からのきの請求の写真か、健介の脅迫LINEだろう。 もう見る気もしなかった。

すると、父が静かにちがった。 奥の畳へき、押し入れの袋をごそごそと探っている。

数分、父が戻ってきた。 そのには、茶く変した古い封筒が握られていた。

父はそれを、私のに静かに置いた。

「……何、これ?」

「けてみなさい」

言われるままに封筒のをく。 に入っていたのは、冊の通帳だった。 埼玉りそなの、かなり古いデザインの普通預通帳。

番最のページをく。 そこには、毎万円、ボーナスのには万円ずつ、几帳面に積みてられた記録が印字されていた。 くの、私が学だった頃からの記録。

差引残の欄には、こう刻まれていた。

『780,000円』

「……父さん」

息が止まりそうになった。

「母さんがんだあと、おがいつか結婚するのためにとってな。の残業代から、しずつ別に取っておいたんだ」

父は恥ずかしそうにを掻いた。

「たいした額じゃない。向こうの親御さんから見たら、はしたかもしれないが……さっき言ってた、向こうがて替えたっていう80万。これでりるなら、向こうに納めてきなさい」

「……っ!」

「おで解決して、おがをげて丸く収まるなら、父さんはそれでいい。おが独りちする切れだとえば、いもんだ」

違う。 そうじゃない。

を殴られたような衝撃だった。 父は、娘が侮辱されたことよりも、娘の未来が閉ざされることを恐れて、自分の血の滲むようなの貯を差しそうとしているのだ。 あの欲な義両親に。 根拠も何もない、言いがかりの請求に対して。

「受け取れない」

私は通帳を閉じ、父の元へく押し戻した。

「結菜」

「絶対に受け取らない。1円も渡さない!」

喉の奥が張り裂けそうだった。

「あの80万はね、向こうが勝に言ってるだけの嘘なの。私が先払った居のおまで、自分たちがしたって偽って請求してきてるのよ。そんな理尽なおに、父さんがで汗流して貯めたおを差しすわけないでしょ!」

ちがり、カバンを肩に掛け直した。

「私、ちゃんと戦うから。契約も、領収も、全部自分で洗って、法に筋を通して終わらせる。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: