"車椅子の看板娘と一億円の代償" 第12話
どれほどのが流れただろうか。
饐えた血の臭いが充満するから、誰からともなく、い取りでの夜気へと逃れるようにていった。
の空気はたく澄んでいたが、肺腑に吸い込んだ夜気配は、しも俺たちの胸の胸糞悪さを洗い流してはくれなかった。
疾が、拳を血が滲むほど固く握りしめ、震える声で俺に問いかけてきた。
「……若。こんな最って、ありなんでしょうか……?」
を滅に表にさない疾の横顔が、激しい憤に歪んでいた。
「あいつ……最期の最期まで、マジでらしいところがしもありませんでしたよ……! 反省も、悔もしていないって……あんなことを言ったまま逝きやがった……! 俺、ここまで理尽で、胸糞悪くて、腹がつ気持ちになったのは……まれて初めてかもしれません……!」
「……ああ」
俺はを仰ぎ、く沈んだ声で答えた。
「俺も、全く同じ気持ちだ」
胸の奥が、どす黒いりと無力で張り裂けそうだった。
「神宮蓮の野郎……獅原のことは、本当に使い捨ての駒としか考えていなかったっていうことだな。万が尻尾を掴まれたら、自害させて証拠を隠滅する……本当に、どこまでも救いようのないだぜ」
俺の掌には、先ほど獅原の首元を掴みげたときの、痩せこけた皮膚の触と、ずっしりとしたみがまだ々しく残っていた。
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その命が、自らので、何の償いもなしに消えってしまったのだ。
沈黙が再びりかかる。部たちも皆、悔しさに顔を歪め、俯いていた。
俺はこのまま絶望に沈むわけにはいかなかった。俺はゆっくりと仲たちに向き直り、腹の底から絞りすような力い声を響かせた。
俺の声に、疾をはじめとする部全員が、ハッと顔をげて俺を注する。
「……おたちも、よく分かっているだろう。あいつの命がなくなったからといって、あいつが犯した罪が消えてなくなるわけじゃない」
俺は部たちのひとりと線をわせた。
「こんな勝なに方で終わらせられて、ナツさんや蒼井ちゃんが、から納得できるわけがないだろうが。……こんなものは、ただの『やり逃げ』と緒だ」
俺の言葉に、部たちの瞳に再び鋭い闘志のが灯る。
「元をぶっ潰す。……神宮蓮を引きずりし、奴に全ての責任を取らせる。それしか、今回の落としをつける方法はねえんだ」
疾が、歩にみてをげた。
「はい……! もちろん、々承しております!」
部たちもそれに続き、力く頷いた。
「悪いな……みんな、よろしく頼む」
その夜、俺たちは変わり果てた獅原の遺体をに収容し、いに包まれた王会の本へと引きげたのだった。
本へ戻った、夜はさらに更けていった。
刻は夜を回っていたが、俺の脳は冴え返り、眠気など微も訪れなかった。俺は自の障子をけ放ち、たい夜が吹き抜ける縁側にひとり腰をろしていた。
入れのき届いた本庭園にはが青くり注ぎ、池の錦鯉が折ねる音だけが静寂を破る。
俺は煙にをつけ、煙を夜空にくゆらせながら、翌に控えた黒龍会への殴り込みについて、考を巡らせていた。いかにして神宮蓮を追い詰めるか。どうやって商からを引かせ、被害者への完全な償いをさせるか。
背から、静かに板敷きを踏む音がづいてきた。
振り返ると、着流し姿の疾が、湯呑みをつ載せた盆を持ってっていた。
「若。……のことについて、考え事ですか?」
俺は苦笑を漏らし、縁側の隣のスペースを軽く叩いた。
「おには、すぐにバレちゃうな。まだ俺、何も言っていないのに」
疾は盆を置き、俺の隣に静かに腰をろした。
「いやいや、何緒にいるとっているんですか。若が考えていらっしゃることくらい、体分かりますよ。……それに、今の獅原の件、現で番苦しそうな、悔しそうな顔をされていたのも、若でしたから」
「……それを言うなよ」
俺は照れ隠しに、隣に座った疾の肩をパシパシとしめに叩いた。
「痛い、痛いですよ若!」
疾はおどけたようにを縮めて見せたが、すぐにその表から冗談のが消え、真剣な差しで青い庭園を見つめた。