"車椅子の看板娘と一億円の代償" 第6話
どれほど悔しく、どれほど自分を責め苛んできたことだろう。
ナツさんは涙でぐしゃぐしゃになった顔をげ、すがるような目で俺の顔を凝した。
「蒼井は……あのヤクザたちに、見せしめで襲われたのよ……! ねえ……こんなこと、普通のお客さんに言うのも筋違いなんだけど……かず君、に……筋につてはないですか……?」
藁にもすがるいで放たれた、痛極まりない懇願だった。
俺は、彼女の魂を削るようなその声を聞き、目を閉じて、ふーっとく、い息を吐きした。
胸ので燻っていたりの炎が、瞬にして徹な殺へと昇華していくのをじていた。カタギの、それも何代も続いて域に尽くしてきた善良な民を脅し、言うことを聞かないと見るや、その端もいかない娘を狙って討ちにする。そんなが、同じ裏社会の板を掲げてのさばっていること自体、到底許しがたい暴挙だった。
俺は残っていたを含んで喉を潤すと、どんぶりに残っていたキツネうどんの汁を気に煽り、み干した。
そして、ドン、と音をててテーブルに丼を置いた。
覚悟を決めるが来たのだ。今まで、ナツさんにはただの気さくな青「かず君」として接してきた。裏社会の血臭い世界とは無縁の好青として、この温かな所にを置いていた。
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だが、そんな欺瞞を守るために、恩の涙を見殺しにすることなど、俺には絶対にできなかった。
俺は背筋を伸ばし、ナツさんの目を真正面から見据えて、く通る声でをいた。
「……ナツさん。俺、実は」
「え……?」
ナツさんが涙で濡れた目を瞬かせ、俺のただならぬ気迫に息を呑む。
「俺、王会というヤクザ組織の、若なんです」
瞬、内の空気が完全に静止した。
ナツさんはを半きにしたまま、俺の言葉のを処理しきれずに固まっている。俺は表を切崩さず、淡々と、だがみを持って言葉を続けた。
「ごないかもしれませんが、王会は応、関最の暴力団組織です。構成員も、かせる資も、報網も、の組とは桁が違います。だから……おそらく、ナツさんたちの力になれるといます」
俺は子からちがり、そのに真っ直ぐに直した。そして、ナツさんに向かって々と、度の角度でをげた。
「今まで、自分がヤクザだということを隠し、黙ったままでいて……本当にすみませんでした」
をげたまま、俺はさらに言葉を絞りした。その言葉には、同じ裏社会の板を背負う者としての、痛烈な恥辱とりが込められていた。
「そして……おそらく、うちの組の者の仕業ではありませんが……同じ極のが、蒼井ちゃんのも体もズタズタに傷つけてしまったこと……本当に、申し訳ありませんでした」
々とげられた俺のを見つめ、ナツさんは激しい混乱に陥ったようだった。目のにいる礼儀正しく優しい青が、関最の極組織のナンバーツーであるという事実。その途方もない落差に、彼女は震える両を宙に彷徨わせ、慌ててをいた。
「えっ……あ、あの……、さん……? そんな、をげてください……! 私、そんなつもりで言ったんじゃ……!」
敬語を使い、怯えと戸惑いをわにするナツさんに対し、俺はゆっくりと顔をげた。
そして、かつてこのに通い詰めていた頃と何ひとつ変わらない、温かな苦笑いを浮かべてみせた。
「ナツさん。敬語なんていりませんよ。俺はどこまでいっても、ナツさんのではただの『かず君』ですから」
俺の変わらない態度に、ナツさんはふっと肩の力を抜き、涙の跡が残る顔で微かに息を吐いた。
俺の表から笑みが消え、再び極の若としての徹ながその瞳に宿る。俺はナツさんの目を真剣に見据え、核を突く質問を投げかけた。
「ナツさん。その、商に乗り込んできた組の名……分かりますか?」
ナツさんは記憶の糸を繰り寄せるように眉をひそめ、井を仰ぎ見た。
「ええと……たしか……『黒龍会』って名乗っていたような気がするわ。真っ黒な名刺を置いていって……」
「黒龍会ですね」
俺は即座に頷き、その名を脳裏にく刻み込んだ。
「承しました。それだけ分かれば、分です」
俺は財布を取りすと、テーブルのに支払うべき代を遥かに超える幣を何気なく置き、伝票を脇に避けた。