"「私はいつ休めるの?」に夫は「家にいるだろ」と返した" 第16話
夫が担当することになったエリア――夜の沐浴、哺乳瓶の消毒、翌のゴミの分別――について、私は切のリマインドをやめた。
最初の数、夫はらかに揺していた。
これまでは、私がったり溜息をついたりすることで、夫は「られている自分」という受なに逃げ込むことができた。 けれど、私が完全に背を向け、淡々と自分のタスクだけをこなして眠りにつくようになると、夫は庭ので完全に孤した。
夫が忘れた哺乳瓶は、朝になっても洗面台のシンクに残されたまま。 予備の乳首がないことに気づき、勤の慌ただしいに、夫自が舌打ちをしながらたいでスポンジを握る。
私はそれを見ても、をさなかった。 代わりの哺乳瓶をしてやることも、際を注することもしない。 ただ、悠斗を膝に乗せて乳のスプーンを元へ運び続けた。
の尻拭いをやめる。 それは、私にとっても血を流すような苦だった。
染み付いた「先回りしてえてしまう癖」をねじ伏せるのは、像以にエネルギーがいる。 散らかった洗面台を見れば、が勝に雑巾へ伸びそうになる。 けれど、そのたびに自分の太ももをくつねって踏みとどまった。
私が拾いげれば、あのは、自分の元を見ない。 が自分の失敗のツケを自分で払う。
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その当たりの痛みを奪うことこそが、最の甘やかしだったのだ。
に入り、川役所から通の親展封筒が届いた。
『保育施設利用調結果通』
封を切り、つ折りの類をく。 そこには、第希望として提していた認保育園の「内定」の文字が、くっきりと印字されていた。
からの入園が決まった。 それは同に、私の職復帰のカウントダウンが、酷なまでにきしたことをしていた。
夜、帰宅した夫のにその通を置いた。
夫はスーツのネクタイを緩めながら、類の文字を凝した。 指先が微かに震えているのが分かった。
「……決まったんだな」
「ええ。から慣らし保育が始まるわ」
私はテーブル越しに、夫のやつれた顔を見据えた。
ここヶで、夫の頬はし削げていた。 これまで私がで抱え込んでいた「庭の運営」に、否応なく組み込まれたからだ。 仕事から疲れて帰ってきても、ソファに直することは許されない。 悠斗をお呂に入れ、暴れる体を拭いて保湿剤を塗り、パジャマを着せる。 順を違えて悠斗が泣き叫べば、自分が汗だくになってあやし続けるしかない。
「会社、は取れないんだろ?」
夫がく尋ねてきた。
「取らないわ。営業事務の主任に戻るから、定は半。残業をゼロにする努力はするけれど、突発なトラブルがあれば遅くなるもある」
「……迎えは?」
「分担よ。は私。はあなた。保育園の延料が発するに、どちらかが必ず滑り込まないとペナルティがつく」
夫は息を呑み、額にを当てた。
「って……俺、営業の締めとかあったらどうすんだよ」
「同僚にをげて引き継ぐか、朝く社して終わらせるの。私がこれまで、会社でずっとやってきたことと同じよ」
突き放すような私の声に、夫は何も言い返せなかった。
以の夫なら、ここで「俺の仕事を邪魔するのか」と声を荒らげていただろう。 けれど、目のにあるのコピーと、からの現実のタイムスケジュールは、そんな甘えた言い訳を々に砕いていた。
「……分かった」
夫は喉の奥から、絞りすように呟いた。
「会社の部には、けに相談する。曜と曜は定でがるって」
その言葉を聞いた、私の背の張りが、ほんのわずかだけ緩んだ。
にをげる覚悟を、夫が自らにした。 で稼いでくることだけを免罪符にしてきた男が、庭を守るために、の社会での振るいを変えようとしている。
変わるかもしれない。 いや、まだ信用してはいけない。 期待して裏切られたのあのたい絶望をいし、私はすぐにをのように固く引き締めた。
がけ、悠斗はヶを迎えた。 ハイハイがおぼつかない取りで始まり、部の隅のコンセントやテレビ台の角に突していく期。