"「私はいつ休めるの?」に夫は「家にいるだろ」と返した" 第12話
理は運ばれてきたアイスティーのストローを回しながら、静かに私の話を聞いていた。 るでもなく、易に同するでもなく、ただく相槌を打つ。
そして、カップを置くと、まっすぐに私の目を見て言った。
「美、ひとつ聞いていい?」
「……何?」
「もし直さんがからさ、言われなくても洗面所のを拭いて、脱いだ靴をカゴに入れて、哺乳瓶を洗うようになったら……美は直さんのこと、もう嫌じゃなくなる?」
臓を指先で突かれたような気がした。
喉の奥が詰まる。 答えを探そうとして、のが急速にえていく。
夫が、事をこなす姿。 ゴミを捨て、器を洗い、笑顔で悠斗をあやす姿。
……無理だ。 胸の奥に広がるのは、堵ではなく、鉛をみ込んだような苦しさだった。
「……嫌なままだとう」
絞りすように答えた自分の声に、私自が番驚いていた。
「なんでだろうね。やってほしいはずなのに。やってくれたら助かるはずなのに」
「信用が、ゼロになっちゃってるからだよ」
理は静かに、けれど確に言葉を継いだ。
「今、美が背負ってるのって、『事の作業量』だけじゃないでしょ。『このは次も忘れるんじゃないか』『また私が尻拭いをする羽目になるんじゃないか』っていう、終わりのない警戒。その認のコストをで払い続けてるから、休めないの」
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目がくなった。 誰かに言われて初めて、自分のの奥底にある澱の正体が分かった気がした。
作業をしてほしいのではない。 「このを全に回す責任」を、半分背負ってほしいのだ。 私が倒れても、私が何も言わなくても、子供を飢えさせず、清潔な環境を保ち、活を破綻させないパートナーであってほしい。
指示をさなければけないは、パートナーではない。 庭という現に配置された、のかかるアルバイトに過ぎないのだ。
「私、復職するまでに黒つけなきゃいけないとってる」
私はめかけたカフェラテにをつけ、く告げた。
「このまま仕事に戻ったら、私、直のこと本当に軽蔑して、憎むようになる。それだけは、悠斗のためにも絶対に避けたい」
理は何も言わず、テーブルので私の張ったをそっと包み込んでくれた。 そのの温もりだけが、張り詰めた私のをかろうじて支えていた。
曜。 たいが窓ガラスを叩いていた。
リビングの引き戸がき、夫が欠伸を噛み殺しながら起きてきたのは、午を過ぎた頃だった。 ボサボサのでスウェットの裾を引きずり、番、眉をひそめる。
「……何? 今、朝飯ないの?」
キッチンで悠斗の乳のストックを作っていた私は、裏ごし器をかすを止めずに答えた。
「だよ。パンならトースターの横にあるから、自分で焼いて」
夫はあからさまに満げな顔をして舌打ちをした。 蔵庫のドアを乱暴にけ、牛乳パックを取りしてコップに注ぐ。その作の端々に、「休に妻から遇されているな俺」という被害者識が滲みている。
その、けたたましくインターホンが鳴った。
画面を見るまでもない。 このに、事の連絡もなく、鳴らし慣れたリズムでチャイムを押すはしかいない。
玄関の鍵をけると、案の定、義母の恵がっていた。 にはきなタッパー。級スーパーのロゴが入ったビニール袋を提げている。
あの洗面所での衝突以来、ヶぶりの来訪だった。 「度と来ない」と言い捨てて帰ったはずなのに、何わぬ顔でがり込んでくる図太さに、胃の奥がキュッと縮む。
「こんにちは、美さん。直が好きだった牛すじの煮込み、たくさん作ったから持ってきたのよ。あの子、最痩せたんじゃないかとって配でねえ」
「……お気遣いありがとうございます。どうぞ」
靴を脱いでリビングへ入ってきた義母は、ソファに座る夫の姿を見るなり、痛ましそうに駆け寄った。
「直、顔悪くない? ちゃんとご飯べてるの? 目のにクマができてるじゃないの」
夫は母親の登に骨に堵したような表を浮かべ、わざとらしくため息を吐いた。
「まあね……最、のがずっとピリピリしててさ。気休まらないんだよ」