みかん小説
本棚

"「私はいつ休めるの?」に夫は「家にいるだろ」と返した" 第6話

私はベッドの端に腰をろし、ベビーモニターのさな画面を見つめた。 暗カメラに映しされた悠斗の顔が、緑がかったのでさく呼吸を繰り返している。

すやすやと眠るその無垢な寝顔。 も、も、この子は腹を空かせ、オムツを汚し、泣いて私を求めるだろう。 その終わりのない営みを、私はから、完全に考を放棄した「もうのきな子供」を抱えながら、たったで回さなければならない。

スマートフォンの画面が、暗のでぼんやりとった。 かれたままのメモ帳。 スクロールしてもスクロールしても終わらない、無数の名もなきタスクの群れ。

私は画面を伏せなかった。 消えることのない青いをじっと見つめながら、自分の呼吸の音だけを聞いていた。

元で、ベビーモニターのノイズが、微かに、けれど絶えなくジジジと鳴り続けていた。

「指示通りにいてやるよ」

そう吐き捨てた翌朝から、夫は本当に「指示待ちの置物」になった。

朝。 夫はリビングのソファに腰掛け、テレビのニュースをぼんやりと眺めていた。 元には、昨脱ぎ捨てられたままの靴が丸まっている。 界に入っているはずなのに、跨いで通り過ぎるだけで、拾おうともしない。

抱っこ紐で悠斗をあやしながら、私は声を絞りした。

広告

「……直、ゴミ袋、集積所にしてきて」

夫は画面から線をかさず、リモコンで音量をひとつげてから言った。

「どこのゴミ? どこにまとまってんの?」

「キッチンのペールのに決まってるでしょ。縛ってあるから」

「ふーん。玄関に置いといてくれたら、るついでに持ってくけど」

ため息をみ込む。 ここで言い返せば、また昨夜のように「鳴られた」「ヒステリーだ」と被害者面をされるだけだ。 私は元でぐずる悠斗の背をトントンと叩きながら、いゴミ袋を両で持ちげ、玄関のたたきに置いた。

夫は勤の際、その袋をまるでの落とし物でも扱うようなつきで指先でつまみ、ドアをてった。 「ありがとう」も「ってきます」もない。

自分のなのに。 自分がしたゴミなのに。

「言われたことだけを、言われた最限の作でこなす」 それが、夫が私に突きつけた復讐の形だった。

、ワンオペで回す事と育児のに、私のスマートフォンは絶えなく震えた。

仕事の夫からのLINEではない。 会社の同僚でもない。 すべて、ドラッグストアやスーパーにち寄った夫からの「確認」だった。

『オムツ、どれだっけ? パンパース? メリーズ?』

『テープ? パンツ? サイズは?』

『夕飯の牛乳、脂肪乳でいいの? 普通のやつ?』

陳列棚の写真を何枚も送りつけてくる。 そのたびに私は、授乳のを止め、片で画面を拡し、品番を指定して返信しなければならなかった。

度、耐えかねて返信したことがある。

『悠斗の体は母子帳にいてあるし、今使ってるパッケージはゴミ箱の横に置いてあるよ。見て覚えてくれない?』

すぐに返ってきたのは、く刺々しい言だった。

『違えたらるだろ。だから聞いてんじゃん』

画面を見つめたまま、喉の奥がヒリついた。

違えたらるから聞く。 正解をるための努力は放棄する。 調べるも、覚える脳のメモリも使わない。 全部、私に確認させて、私に決定させれば、万が違ったものを買ってきても「おがそう言ったから」と言い訳ができる。

だけをかし、考の責任はミリも背負わない。 それがどれほど私の精神をすり減らしているか、あのには像すらつかないのだ。

気がつけば、悠斗を産んでから週以、湯に浸かるどころか、分続けてシャワーを浴びることすらできていなかった。 髪は常に乾きで、皮がく軋んでいる。 鏡に映る自分の顔はで、目のには消えない青黒いクマが張り付いていた。

曜の夜。 計の針がを回った頃、夫が帰宅した。 曜の解放からか、いつもより嫌が良さそうに見えた。

今夜しかない。 そうった。

私は夕の片付けを終えたあと、ソファに座る夫のにった。

「直。お願いがあるんだけど」

夫はスマートフォンから線をげ、警戒するように目を細めた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: