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"式1時間前の略奪と百八十万円" 第10話

展示会当、待ちわせ所に現れたこよりは、柔らかなベージュのワンピースに、歩きやすいフラットシューズを履いていた。

「……変じゃないですか? 先輩とかけるだから、ちょっとだけ頑張ってみたんですけど」

「すごく、似ってるよ。も、靴も、全部」

「そういうの、最初から言わないでください……かけるから、顔がくなっちゃうので」

具展の会で、俺たちはつの製のピッチャーのでを止めた。

「この取っ、でもでも持ちやすい形になってるね」

「本当だ。俺、全体のフォルムばっかり見てたよ」

「先輩はどうやって作ったかを見るんですね。私は、誰がどうやって使うかを見ちゃうみたいです」

「じゃあ、でいればちょうどいいな」

そんなのない会話を交わしていた、こよりのスマートフォンが震えた。

画面を見たこよりの表が、瞬で凍りついた。

『かり』からの着信だった。

こよりは通話ボタンを押し、声で応対した。漏れ聞こえてくる声は、鋭くややかだった。

『……あんた、まだ蒼介と緒にいるの? 調子に乗らないでね。優しくされたからって、本気にしない方がいいわよ。あの、結婚式で捨てられて寂しいだけなんだから』

通話が切れ、こよりは力なくち尽くしていた。

「……丈夫か?」

「丈夫です……帰り、何をべますか?」

無理に作ったその笑顔は、今朝のるい表とはまるで違っていた。

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俺は彼女のを引き、ギャラリーのの静かな公園のベンチへと連れした。

「何があったか、話したくなったら聞くよ」

こよりはベンチの端を握りしめ、い沈黙のに、ぽつりと呟いた。

「……姉の代わりだとわれたらどうしようって、ずっと怖かったんです」

「え……?」

「困っている先輩に優しくして、くにいれば、振り向いてもらえるんじゃないかって……私、すごくずるいなんじゃないかって。でも、緒にかけようって言われた、嬉しくて断れなくて……」

すぐに「違う」と言いかけて、俺は言葉をみ込んだ。自分が楽になるための易な否定を、彼女に押し付けたくなかった。

俺は向き直り、こよりの濡れた目を真っ直ぐに見つめた。

「最初は、助けてもらうことばかり考えてた。それは本当だ。でも……今は違う。俺が笑うと、自分のことみたいに嬉しそうにしてくれるところとか、困ってるのに『丈夫』ってがってしまうところとか……最、こよりちゃんのことばかり考えてるんだ」

「先輩……そんな顔で言われたら、期待しちゃいますよ」

「期待していいよ。曖昧にしたくないから、言ってるんだ」

こよりは息を呑み、粒の涙をポロポロと零しながら言った。

「先輩……私、ずっと先輩が好きでした。学の展示で私の模型を見てくれたあのから、ずっと。でも、姉と付きってるってって、諦めようって決めて……先輩がに来るは、なるべくにてたんです」

彼女がスマートフォンを取りし、画面を見せてくれた。そこには、数の学の展示で、さな模型を挟んでしゃがみ込む、若きの俺とこよりの姿が写っていた。

彼女が切に守り続けてきたいを、俺は今、初めてった。

「ただ好きだったから助けた、それだけにわれたくなかったんです。あの、先輩がで帰っても、私には何も起きなかったかもしれない。でも……先輩を見送るようなには、どうしてもなりたくなかった」

「うん」

「何かを返してほしくて傍にいたわけじゃないんです」

「分かってる。だから、俺も自分のでちゃんと考えたんだ。姉さんのことを忘れるために、君を利用したくない。俺は、こよりちゃんが好きだ。俺と、付きってくれませんか」

こよりは信じられないというように両で元を覆い、何度もさく頷いた。

「……私で、本当にいいんですか?」

「こよりちゃんがいいんだ」

「じゃあ……つだけ、わがままを言ってもいいですか?」

「何でも言ってくれ」

「……『こより』って、呼んでください」

俺はし照れながら、それでもしっかりと声にした。

「こより」

「はい……! 先輩に名を呼ばれると、自分の名まで好きになっちゃいますね」

を伸ばすと、こよりは迷わずその温もりを受け止め、の指が固く結ばれた。

恋同士になっても、俺たちの器用な常が急激に変わるわけではなかった。

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