"式1時間前の略奪と百八十万円" 第9話
「俺も、の広さの覚で試してたからな。とも、実際の現の密度を像しきれてなかった」
「最初から、先輩だけで考えた方がかったですよね……余計な仕事を増やしちゃって」
「案をしてくれたが、失敗の責任までで背負い込む必はないよ」
俺は片をに取り、削り直しのラインを鉛で引きながら言った。
にしてから、それはかつて宮のでで責任を抱え込み、夜に黙って修正作業をしていた自分自に、番言ってやりたかった言葉だと気づいた。
「ほら、役を交代しよう。俺がお客さん役をやるから、こよりちゃんは隣の席に座るのきをやってみてくれ」
「……はい! きな荷物のも試しましょう。お米の袋、持ってきます!」
「ここでもキロの米袋かよ」
で何度も座り、ちがり、鞄を掛け直した。
気がつけば計の針は夜を指していた。
「こよりちゃん、今はおの番だったろ。もう休んだ方がいい」
「まだ丈夫です……写真の配置だけ決めたら」
「その『丈夫』、さっきも聞いたぞ。ほら、続きはにしよう。同じ写真をもう回もかしてる」
俺がパソコンのマウスを取りげると、こよりはぽつりと呟いた。
「……役にちたかったんです。姉のせいで、先輩からいろんなものが失われちゃったから」
「姉さんの分を、こよりちゃんが埋めようとしなくていいんだよ」
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「埋めたいわけじゃ……」
「うん、ごめん。そういう言い方も違ったな。ただ、俺が息を吹き返すために、こよりちゃんが無理をして擦り減るのは嫌なんだ」
自分のからた言葉に、俺自が驚いていた。
誰かに配されることすら怖かった男が、目ののを同じ量で配し、守りたいと願っていた。
こよりは目を丸くし、それから赤くなった顔をで覆った。
「……先輩って、そういうこと急に言いますよね。ずるいです」
「変なこと言ったか?」
「困ります……嬉しいから、困るんです。顔にちゃうから」
その仕があまりにもらしくて、俺は買っておいた甘いカフェオレをもう本差しした。
週、完成した脚の子を『寺尾』に納品した。
背もたれのいの傷はそのままに残し、で触れる部分だけを丁寧に研磨して滑らかにえ、改良した製フックは座面のに美しく収まっていた。
「まあ……座ったじが、ちゃんとあの頃のこの子だわ」
寺尾さんは脚ずつ座り、く息を吐いて微笑んだ。
「背もたれの傷を残してくれて、本当にありがとう。……それから、この荷物掛け、本当に元が広くなるわね!」
「脚とも、派にき返らせてくれたわね。とも、本当にいい仕事をしてくれたわ」
寺尾さんはレジカウンターの横を指差した。
「このショップカード、ここに置いてもいいかしら? うちのお客さん、同じように古い具のことで困ってるがたくさんいるから」
『具修理・製作:野坂蒼介 / 空・線提案:帆波こより』
の名が並んださなカードが、レジの横にちょこんと置かれた。
をた、こよりはち止まり、俺の袖を掴んだ。
「……よかった。ちゃんと使ってもらえましたね」
「こよりちゃんのアイデア、すごくんでくれたな」
「先輩が、形にしてくれたからです」
「で作ったんだよ」
こよりは嬉しそうにびねるように笑い、それから急に恥ずかしそうにを引っ込めた。触れっていた袖の奥が、いつまでも温かかった。
寺尾さんののカードから、さな依頼が件、い込んできた。
きな売りげには程かったが、らない誰かが、俺たちの名を見て仕事を頼んでくれた。その事実が、凍りついていた俺の背を、しずつ温めていた。
「こよりちゃん、次の休み、空いてるか?」
あるの夕、俺はい切って切りした。
「はい。写真の撮り直しですか?」
「いや、仕事じゃなくてさ。駅の向こうのギャラリーで、暮らしの具の展示をやってるんだ。こよりちゃん、こういうの好きかなとって」
こよりの瞳が、パッと輝いた。
「好きです! 緒に見にきたいです!」
「帰りに、ご飯もでべよう」
「きます! 先輩となら、絶対に予定を空けておきます!」
その夜、階へがるこよりの取りは、いつになく軽やかだった。