"昨日の私を着る女" 第10話
「曜の午半、私は会社の自席で、ヘッドセットをつけてクレーム対応をしていた。さん、その、私の斜め向かいの席にいたよね?」
さんは類のを見つめ、ハッとしたように顔をげた。
「……いた。理がずっとをげながら、メモを取って話してたの覚えてる。声がフロアに響いてたから」
「その同じ刻に、千先輩のマンションのに現れた物がいる」
政士の女性が、タブレット端末をさんのに滑らせた。
再されたのは、千先輩のアパートの管理会社から正式に示請求をって入した、防犯カメラの映像だった。
画質は粗いが、刻は午分を指している。
のツイードジャケットを着た女が、防犯カメラの角を正確に縫うようにして歩き、自販売の脇にち止まっていた。
「体型も、髪型も、佐伯さんに似せています」
政士が淡々とした調で言った。
「ですが、佐伯さんはこの、社内システムと複数の同僚の目撃証言によって、オフィスにいたことが完全に証されています。つまり、ここに映っているのは佐伯さんではない」
さんは元をで覆い、絶句した。
「じゃあ……これ、本当に鈴さんなの……?」
「それだけではありません」
千先輩が、通の茶封筒を差しした。
からてきたのは、、の会社で鈴真由が署名・押印した『接触禁止に関する』の写しだった。
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「彼女には歴があります。すでに警察の活全課には、相談番号『#9110』を通じて事相談の記録が残っています。今回の件は、社内の関係の縤れではなく、確なストーカー事案の継続です」
私はさんの目を見つめた。
「さんにお願いしたいのは、鈴さんを告発することじゃない。曜の午、私が自席で話対応をしていたという事実だけを、曜に総務へ証言してほしいの」
さんは唾をみ込み、力く頷いた。
「……わかった。私、ちゃんと話す」
で訴えるフェーズは終わった。
堀は、すべて埋まった。
*
曜の朝半。
私は田主任をび越え、総務事部のデスクへ直接向かった。
政士が作成した申、私の業務通話ログ、そして千先輩の弁護士から届いた通の控えを、部のに静かに置いた。
同に、所轄の警察署の活全課から、会社の事宛てに本の話が入った。
藤井千に対するつきまとい為の捜査関係事項照会だった。
フロアの空気が、目に見えて変わった。
午、役員応接に、私、さん、総務部、そして田主任が集められた。
田主任の額には、びっしりとや汗が浮いていた。
「佐伯……お、警察まで呼ぶなんて、ごとにするなと……」
「主任」
総務部がい声で遮った。
「黙っていなさい。
あなたの初期対応の誤りが、問題をここまで刻化させたんです」
田主任はを噤み、所なげに線を落とした。
扉がノックされ、鈴真由が入ってきた。
彼女はいつも通りの、清潔のあるアイボリーのブラウスを着ていた。
だが、部にいる警察官の姿を認めた瞬、彼女の歩幅がほんのわずかに狂った。
「座りなさい、鈴さん」
部が促した。
鈴さんは静かにパイプ子に腰掛け、両を膝のでねた。
取り乱す様子も、泣き真似をする気配もなかった。
部が、曜のについて質した。
「鈴さん、あなたは曜の午、病院にったあと実で療養していたと報告しましたね」
「はい。母もそう証言したはずですが」
鈴さんの声は、落ち着き払っていた。
「警察の方が、あなたの交通系ICカードの利用履歴を確認しました」
警察官が帳をき、淡々と読みげた。
「曜の午分、あなたが職の最寄り駅で入。午分、藤井千さんの自宅アパートの最寄り駅で。そして同の夕方分に、同駅で再び入しています」
応接のに、針を落としたような静寂が落ちた。
「病院の領収、あるいは診察券の提示を求めましたが、提されていませんね」
鈴さんは微だにしなかった。
言い訳も、反論もしなかった。
ただ、膝のの指先が、わずかにくなるほどく結ばれていた。