"「ここは新妻の家」と笑う義母へ突きつけた、青い契約書" 第7話
欠陥品。 話越しに、15連れ添った夫から放たれたその言葉。 かつてなら、胸が張り裂けて涙を流していただろう。 だが、今の私のには、ただ氷のような徹さだけが満ちていた。
「浩司。あなたの指示で、私の母の遺品をゴミ箱同然に扱ったのね?」
『あ? ガラクタだろんなもん! ごちゃごちゃ言ってないでてけ! 俺がハワイから帰るまでに部を空けとかないと、残った荷物全部産業廃棄物に放り込むからな!』
通話が方に切られた。
静まり返ったリビング。 義母は「息子のろ盾」を得たことで再び勢いを取り戻し、腕を組んで私を睨みつけている。 そして、ダイニングテーブルの女――美穂は、オロオロと線を泳がせながら、さな声でをいた。
「あの……奥さん」
美穂が、お腹を庇うようにちがった。 「私……浩司さんから、もう婚の話しいは全部終わってるって聞いてました。ここは浩司さんが独代に頑張って買ったマンションで、もうすぐ妻がてくからって……。私、もうすぐまれるんです。赤ちゃんのためにも、どうか穏便にてっていただけませんか?」
その言葉に、私はわず乾いた笑いを漏らしてしまった。
「……買った?」 「え?」 「美穂さん。あなた、夫からそう聞かされていたの?」
「え、ええ……。浩司さん、の役員になる予定で、このマンションもローンを完済していて……」
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義母も横からを挟む。 「当たりでしょう! うちの浩司がどれだけ稼いでいるとってるの! あんたみたいな女を養ってあげてたのよ! 浩司のからさっさとてきなさい!」
私は何も言わず、姉に線を送った。 姉は静かに頷くと、ビジネスバッグから通の類を取りした。
青い表の、みのある公文。 表には、太い朝体でこう印刷されていた。
『普通建物賃貸借契約』
私はその類を受け取り、ダイニングテーブルの央、美穂の目のに音をてて置いた。
「な、何よそれ……?」 義母が審そうに眉をひそめる。
「美穂さん、よく見て」 私は契約のページをめくり、署名押印の欄を指先で叩いた。
「この部はね、持ちでもなんでもありません。15に契約された、民の賃貸マンションです」
リビングの空気が、ふっと止まった。
「賃借――つまり、この部の正式な借主の名を見てください」
美穂が恐る恐る、テーブルのの類に目を落とす。 そこには、はっきりと私の名が印字されていた。
【賃借(借主):佐藤 由美】 【連帯保証:田 真紀】
契約のに、「佐藤 浩司」の文字はどこにもしなかった。
「……え?」 美穂のから、の抜けたような声が漏れた。
「初期費用の敷、礼、仲介数料の計百万円。すべて私の独代の預座から支払いました。
契約名義は私単独。連帯保証は私の姉です」
私は歩、美穂と義母にづいた。 が反射に、ずさりする。
「夫の浩司はね、当転職したばかりで勤続数がりず、賃貸の入居審査すら通らなかったのよ。だから私が私の名義で借りたの。毎の賃万円の引き落とし座も、私の与振込座よ」
「う、嘘よ!」 義母が鳴のような声をげた。 「浩司が毎おを払ってたはずよ! あまり適当な嘘をつくんじゃないわよ!」
「浩司が私に渡していたのは、活費という名目の数万円だけです」 姉が横から、の通帳のコピーをテーブルに叩きつけた。 「それも、ここは『会社の業績が悪い』と言ってほとんど滞納。賃の全額を、妹の由美がで補填し続けてきたのよ」
美穂の顔から、気に血の毛が引いていくのが見えた。 唇がガタガタと震え、きなお腹のに添えられた両が直している。
「嘘……だって浩司君、ここは自分の資産だって……。婚約指輪も、このがあるから、会社の役員になって落ち着くまでしてくれって……」
美穂の呟きが、静まり返った部に落ちる。
「美穂さん、あなた騙されていたのよ」 私は淡々と、しかし容赦なく現実を突きつけた。
「夫はね、持ちなんてつも持っていません。役員昇なんて話も真っ赤な嘘。それどころか、あなたをハワイに連れてくためのも、私のアカウントから無断で引きされたものよ。
……そしてこのは、法律、完全に私の支配にある賃貸物件です」