"「ここは新妻の家」と笑う義母へ突きつけた、青い契約書" 第3話
いつか分かってくれる。いつか本当の族になれる。 その握りの希望にすがりついて、を削り続けてきた15。
その結末が、これだった。
病の窓のが、み始めていた。 夜がけていく。 がきし、無にもしいが始まろうとしている。
私はベッドのリクライニングをしだけ起こした。 腹部に引き裂かれるような痛みがったが、声はさなかった。 枕元からもう度スマートフォンをに取り、アドレス帳をく。
通話ボタンを押す相は、しかいなかった。 実の姉、真紀。 司法士事務所で働き、昔から静沈着で、何があっても私の方でいてくれた。
コール音が3回鳴ったところで、通話が繋がった。 「……由美? どうしたの、こんな朝くに。術、昨だったわよね? 体は丈夫なの?」 姉の張り詰めた、配そうな声がに届いた。
その温もりに触れた瞬、喉の奥が詰まりそうになったが、私は必に奥歯を噛み締めた。 ここで泣いたら、度とちがれなくなる。
「お姉ちゃん……今、話せる?」 「ええ、丈夫よ。ちょっと待って、何かあったの? 声がおかしいわ」
私は、昨夜から起きたことを、極めて淡々と、事実だけを並べて話した。 浩司が張と偽ってハワイへっていること。 が妊娠しており、義族全員でその産祝い旅へっていること。
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義妹がグループチャットに誤爆を装って写真を送りつけてきたこと。 そして、術の私に対して、夫と義母から「をてけ」「婚しろ」と連絡があったこと。
受話器の向こうで、姉の息を呑む音が聞こえた。 数秒の、苦しい沈黙。 やがて、く、押し殺したような姉の声が返ってきた。
「……信じられない。の血が通っているのやることじゃないわ」 「お姉ちゃん、写真、転送したから見て」
姉が元の端末を操作する気配がした。 数秒、受話器からギリッと歯をいしばるような音が漏れた。
「……これ、本気なの? この男、自分の奥さんが腹を切って寝込んでいる当に、とその族を連れてハワイでシャンパンけてるの? なんなの、この『Welcome Baby Sato』って。反吐がるわ」 「うん」 「由美、泣いてないでしょうね。悔しがってるじゃないわよ。こんな連に、滴でもあなたの涙をくれてやる価値なんてない」
姉の鋭い声が、私のえ切った考を覚させていく。 「泣いてないよ。涙、滴もなかった。……ただ、悔しい」 「当然よ。15よ? あなたがどれだけあのに尽くしてきたか。……由美、浩司からのメッセージに返信は?」 「まだ何も返してない」 「絶対に返信しちゃダメ。文字も打たないで。既読もできるだけつけないで。な文面を送ったら、あっちのう壺よ」
姉は息つき、仕事モードの徹な声に切り替えた。
「まず、状況を理しましょう。浩司は『マンションを空けろ』『美穂とむマイホームだ』って言ってるのよね?」 「うん。義母もそう言ってきた」 「……あの馬鹿ども、本気で言ってるの?」 姉の調に、らかな侮蔑が混ざった。 「由美、あなたがあのマンションを借りたときの契約、覚えてる?」
姉のその言葉に、私の記憶の糸が繰り寄せられた。
15。 結婚してもない頃、私たちは賃貸宅を探していた。 当の浩司は、さな請けの製造会社に転職したばかりで、勤続数がく、信用の審査にがあった。 方の私は、総病院の医療事務として正社員でく勤めており、社会信用も勤続数も分だった。
「契約者、私だよ」 私の言葉に、姉が力く頷く気配がした。
「そうよ。あの部はね、浩司が買った持ちでもなんでもない。『普通建物賃貸借契約』で、契約名義はあなた、佐藤由美単独よ。初期費用の敷も礼も、あなたの独代の貯から全額振り込んだの。仲介業者の類の控え、うちの事務所の庫に預かってあるわ」
ので、がれていくような覚があった。
「浩司は……自分の会社で見栄を張りたかったのか、周囲には『俺が買ったマンションだ』って吹聴していたわよね。義母もそれを鵜呑みにして、『息子の』だとい込んでいる。でも現実は、ただの賃貸。
それも、借主の権利は完全にあなたにある」
「浩司、毎いくらか活費として私におを渡していたから……それで自分が賃を払っている気になっていたんだとう」