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"「妹の祝いだ50万出せ」と言った夫の裏の顔" 第16話

美の声はさかったが、芯があった。

「いいえ。美さん、翔太さん。よくここまで踏ん張ったわね」

「義姉さんのおかげです。あのままに流されていたら、僕たちの婚活ごとい潰されるところでした」

翔太さんが静かに微笑んだ。 その瞳には、族を守る男としての覚悟が宿っていた。

その、待の自ドアがき、濡れた傘を引きずるようない音が響いた。

入ってきたのは、夫――夫だった。

目でそれと分かるほど、男はさく縮こまっていた。 かつて仕ての良さを誇っていたスーツの肩にはの染みが広がり、ズボンの裾はで汚れていた。 無精髭が伸び放題の頬は削げ落ち、目のには黒々とした隈が張り付いている。 線はをうばかりで、妹の顔すら見ることができない。

そして、その背から、息を切らせて駆け込んできたがあった。

義母だった。

濡れそぼった髪を振り乱し、派なのレインコートを羽織った義母が、血相を変えて待にび込んできたのだ。

「夫! 由美! 待ちなさいよ!」

受付の職員が眉をひそめてちがるのも構わず、義母は私の元へと突してきた。 そのには、のねたハンドバッグ。

「あんたたち、何の真似よ! 公証役だなんて……公正証なんて作ったら、夫が犯罪者になっちゃうじゃないの!」

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義母は私の腕を掴もうとを伸ばしてきた。 だが、そのは空を切った。

に割って入ったのは、美だった。

「触らないで、お母さん」

く、突き放すような美の言。 義母が信じられないものを見るように、目を丸くした。

「み、美……? あんた、実の母親に向かって何て言いなの! お兄ちゃんを助けてあげなさいよ! 翔太さんに言って、会社への訴えを取りげてもらえば、夫は課に戻れるのよ! あんたたち内でしょうが!」

「内だから何なの?」

美の歩も引かない差しが、義母の顔を射抜いた。

「お兄ちゃんは、私と翔太さんの結婚のお祝いを盗んで、と温泉旅にったのよ。お母さんはそれをってて、座でご飯をご馳になって、んで私を騙してたんでしょう? どこが内なのよ! 私たちのこと、都のいいづるとしかってなかったくせに!」

「ち、違うわよ! あれは夫がちょっと魔が差しただけで――」

「魔が差したんじゃないわ」

美の瞳から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。 だが、その声は度も震えなかった。

「お兄ちゃんをこんな怪物にしたのは、お母さんよ。さい頃から『男だから派』『おが番偉い』って甘やかして、どんな嘘も庇って、の痛みを教えなかった。お母さんが、お兄ちゃんをダメにしたのよ!」

義母のが、魚のようにパクパクと閉した。

自だった娘からの、容赦のない断罪。 所の目を気にし、世体を取り繕い、息子の虚栄を満たすためだけにきてきた老婆の精神が、内側から音をてて崩壊していくのが分かった。

「お静かに願います」

公証役の奥から、厳格な表をした公証が顔をした。

「佐藤夫さん、由美さん、田翔太さん、美さん。おです。別へどうぞ。……付き添いの方、当事者以は入できませんので、ロビーでお待ちください」

「あ、あの……私も母親として――」

「部者の方は入れません」

公証の事務で徹な言が、義母の言葉を遮った。

夫は度も母親を振り返ることなく、引きずられるように部へと歩をめた。 残された義母は、たいパイプ子にへたり込み、濡れた傘を抱えて呆然とち尽くしていた。

公証役の相談は、を基調とした無質な空だった。 央のきな机には、すでに製本された分い類が部、然と並べられていた。

『制執認諾文言付き公正証』

その々しい表題が、蛍灯のをね返している。

公証が鏡の位置を直し、淡々とした調で条項を読みげ始めた。

「第〇条。佐藤夫は、田翔太および美に対し、法に領得した40万円の返還債務があることを承認する。本債務は、本以、毎5万円ずつの分割にて支払うものとする」

夫がビクッと肩を震わせる。

「第〇条。佐藤夫と佐藤由美は、協議の婚をすることにする。

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