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"「中絶して逃げた」元妻が連れていた、七歳の双子" 第8話

真理さんから聞いたわけではない。 だが、に由美が働いていた会社の同僚や、当の記憶を頼りに、探偵を雇うまでもなく辿り着くことができた。

駅の寂れた商を抜けた先にある、規模の品スーパー。 『フレッシュマート・にしだ』。

舗の裏、トラックが横付けされる搬入の脇に、従業員用の駐輪があった。 脚が次第にくなり、アスファルトを黒く濡らしていく。 私は自販のにを潜め、たいの匂いを吸い込みながら、そのを待った。

午。 搬入のい鉄の扉がき、エプロンをした数の女性たちがてきた。 談笑しながら傘をく主婦たちのに、あのの姿があった。

褪せたベージュのレインコート。 襟元は擦り切れ、撥加もとうに切れているのか、粒がに黒い染みを作っていく。 には、ビニールテープで補修された古い買い物袋。

由美は、駐輪の奥にめてあった、に子供用の座席がついた自転へ向かった。 バッテリーは見るからに旧型で、フレームの至る所に錆が浮いている。

鍵を解錠しようと、由美がを屈めた。 その細い背が、のたさに耐えかねるように、かすかに震えているのが見えた。

「由美」

音を割いて、私の声が落ちた。

由美の肩が、ビクッとねがった。

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鍵を持ったが止まる。 ゆっくりと振り返ったその顔に浮かんだのは、昨の病院と同じ、底れない恐怖と絶望だった。

「……どうして」 声が、のに消えそうだった。 「姉から……度と来ないでって、言ってもらったはずです」

「話を聞いてくれ。頼むから」 私は歩、濘んだアスファルトを踏みした。

「来ないで!」 由美は自転のハンドルを握り直し、それを盾にするように構えた。

「警察を呼びます。本当に、叫びますから!」

「呼んでいい。叫んでもいい。だが、これだけは言わせてくれ」 私はが顔を伝うのも構わず、コートの内ポケットから、真理さんに見せたあの封筒と、もうつの類を取りした。

「おが切迫流産で入院していたの診断を見た。母さんが隠していたも、全部読んだ」

由美の瞳が、かすかに揺れた。

「俺は……、おがでどれだけの獄を耐えていたのか、さっき真理さんから聞いた。らなかったじゃ済まされない。俺が、おをにした。母さんの狂気から、おと子供たちを守るどころか、仕事にかまけて見殺しにした。全部、俺の罪だ」

が、激しさを増していく。 由美のレインコートの肩が、ぐっしょりとを吸ってそうに垂れがっていた。 由美は何も言わなかった。 ただ、え切った唇を固く結び、私を見つめていた。

「DNA鑑定を受けてくれ」 私は喉を詰まらせながら、必に言葉を絞りした。

「認届をす。裁判所の続きでも何でも受ける。養育費は、過の分もすべて括で払う。座の番号を教えてくれ。今すぐ、俺の持っている全財産を振り込む。だから……」

私は、自分のポケットから、実印と通帳、そしてカードを取りし、由美の自転の荷台へ差しそうとした。

「頼むから、俺に償わせてくれ。あの子たちの父親として、責任を取らせてくれ。おたちを、これ以みじめな目に遭わせたくないんだ。俺が……俺が、おたちを助けたいんだ」

必だった。 これこそが、誠だとっていた。 自分の非を認め、を差しし、父親としての責任を背負い直す。 それが、男としての、としての最限の筋の通し方だと信じ切っていた。

だが。

由美のから漏れたのは、嗚咽でも、謝でもなかった。

「……助ける?」

それは、氷点の底から響いてくるような、乾いた嘲笑だった。

由美は、荷台に置かれそうになった私の通帳とカードを、の甲で払いのけた。 パサリと、プラスチックのカードがのに落ちる。

「由美……?」

「佐藤さん。あなた、今、何て言いました?」

由美が顔をげた。 に濡れた髪の隙から覗くその瞳は、りすら通り越し、完全にえ切っていた。

「『助けたい』? 『みじめな目に遭わせたくない』?」

由美の指先が、自分の擦り切れたレインコートの胸元をく掴んだ。

「みじめ? 私たちが、みじめに見えるんですか?」

「いや、そういうじゃなくて、銭に苦労してきただろうから――」

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