"結婚記念日に渡された電車の片道切符" 第5話
弁護士は、際よく類に目を通していく。
折、鏡の奥の目を鋭くらせながら、元のノートにペンをらせた。
「……酷いですね」
類から顔をげた弁護士の最初の言だった。
「族カードの私流用、悪質です。婚姻費用の分担義務に反するだけでなく、貞相に対する慰謝料請求、および使われた共財産の精算として分に主張できます」
「婚……できますか」
声が掠れていた。
「もちろん能です。ただ、焦って今すぐ婚届を突きつけるのは得策ではありません。まずは別居の実績を作り、婚姻費用を法に確定させ、相の財産を正確に把握することです。ご主は見栄っ張りのようですから、自分の非を認めたがらないでしょう。堀を、1ミリの隙もなく埋めましょう」
淡々としたプロの言葉が、私のえ切ったにしずつを取り戻してくれた。
法律という武器がある。
で泣き喚く必はない。制度のルールに従って、あの男から奪われたものをすべて回収すればいいのだ。
事務所をたときには、京の空は暗い夕暮れに染まっていた。
鞄のの受任通の控えが、ずっしりとかった。
だが、自宅のマンションのに着いたとき、私のは再び止まった。
娘の美咲の顔が浮かんだからだ。
学3。受験を控えた事な期。
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親の都で庭を壊し、父親を奪うことが、あの子の未来にどれだけの傷を残すのか。
鍵をけて玄関に入ると、リビングのかりがついていた。
「ただいま」
努めてるい声をした。
美咲の部のドアがき、制姿の娘が静かに廊にてきた。
そのには、えピタの箱が握られていた。
「お母さん」
美咲は私の顔をじっと見つめ、迷いのない声で言った。
「お父さんと、婚するんでしょう?」
臓が、ねがった。
「美咲……どうして、そんなこと」
私は靴を脱ぐのも忘れ、娘の顔を見げた。
美咲は怯えるでもなく、泣きそうな顔をするでもなく、ただ静かに私を見つめていた。
「隠さなくていいよ。ずっとから、分かってたから」
美咲は私をリビングのソファに座らせ、温かいほうじ茶を淹れてくれた。
さなが、湯呑みを私のに置く。
いつのにか、私より背がくなりかけている娘の。
「お父さん、もうずっとにいないのと同じだったじゃん」
美咲はぽつりと言った。
「の、お母さんが39度のして寝込んだときのこと、覚えてる?」
覚えていた。
あの、直は「どうしてもせないトラブル処理がある」と言って、夜まで帰ってこなかった。
「あの夜ね、お母さんのががらなくて、私が夜にでドラッグストアにえピタとポカリを買いにったの」
美咲は自分の膝ので、きゅっと指を組んだ。
「その帰り、駅のカフェのガラス越しに、お父さんが見えたんだよ」
息が止まりそうになった。
「若い女のとふたりで、楽しそうにパフェべてた。お母さんがで苦しんでるのに、女のの肩を抱いて笑ってたの。……私、怖くて、誰にも言えなかった」
「美咲……」
私の目から、止めどなく涙が溢れした。
隠せていたとっていた。
娘のでは笑顔を作り、父親の悪は決して言わず、「お父さんは仕事で忙しいのよ」と言い聞かせてきた。
だが、子どもはすべてを見ていたのだ。
自分の母親がどれほど蔑ろにされ、父親がどれほど庭を軽しているかを、私以に徹にじ取っていた。
「学の者面談だって、お父さんは『事な商談がある』って度も来なかった。部活の最の会も来なかった。でも、自分のゴルフやみ会には絶対にく」
美咲は私ののに、自分の温かいをねた。
「お母さん、もう私のためにしないで」
その声は、震えていなかった。
14歳の娘が、母親の私を救おうとしていた。
「お父さんがにいると、空気がくて息が苦しいの。お母さんが無理して笑ってるのを見るのが、番辛かった」
「美咲……ごめんね。本当に、ごめんね……」
私は娘を抱きしめた。
娘の肩はさくて、でも信じられないほど頼もしかった。
もう、迷いはなかった。
「子どものため」という言い訳で、自分の尊厳を売り渡すのは、今で終わりにしなければならない。