"断髪の夜に消えた七年目の花嫁" 第11話
「お疲れ様、林さん。さすがだったよ。君がこのプロジェクトの救世主だ」
「ありがとうございます、蓮さん。でも、まだ第期が終わっただけですから」
織が微笑むと、蓮は優しく目を細めた。その差しには、仕事のパートナーとしてのい敬と、それ以の温かなが宿っていた。
その頃、実の林では、さらなる混乱が起きていた。 ガスの元栓が突然止まり、呂も沸かせず、ガスコンロも使えなくなっていた。
「おい! アプリで支払おうとしても、お客様番号が違うって弾かれるぞ! どうなってるんだ、このクソアプリめ!」
昭男がスマートフォンをソファに投げつけた。 母が織の残していった活管理ノートを必にめくり、あるページで指を止めた。そこには、びっしりと几帳面な字で、族のあらゆる活報がき留められていた。
『ガス契約番号、管理会社の緊急連絡先』 『お父さんの胃カメラ再診:までに絶の予約確認』 『お母さんの内障検診:紹介状は引きしの奥』 『美結の実習および国試験の申し込み締め切り:必着』
「……美結の締め切り……って、もう過ぎてるじゃないの!」
母が叫んだ。美結の顔から血の気が引いた。
「嘘……! お姉ちゃんのせいよ! ってたなら、なんで声かけてくれなかったのよ! あいつが声をかけてくれれば、逃すはずなかったのに!」
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「美結!」
母が珍しく、烈の如く鳴り声をげた。
「お姉ちゃんのせいにするんじゃないわよ! あんたの試験でしょうが! 机の引きしを見てみなさい! 民票のコピーも、写真も、申請類も、お姉ちゃんが全部綺麗にまとめて封筒に入れて置いていってくれたじゃないの! どうして今まで全部やってもらっていたことを当たりだとって、自分が確認しなかったミスまであの子を責めるの!? お姉ちゃんはあんたの召使いじゃないのよ! あんたたちのおもちゃでもないの!」
母はノートを胸に抱きしめ、そのに崩れ落ちて泣きした。 美結は唇を噛み締め、何も言い返せなかった。
数、昭男が所のスーパーへ買い物にかけると、所にむの男性から声をかけられた。
「よう、林さん。娘さん、関ですごく世して活躍してるらしいじゃないか。うちの娘がSNSで社内報のニュースを見て驚いてたよ。……まあ、遅いくらいだけどな」
昭男はを止めた。
「……遅い? 何の話だ」
は議そうに眉をひそめた。
「何言ってんだよ、忘れたのか? 数、学の教授がわざわざ君のを訪ねてきただろう。織さんは成績優秀で、県の若材育成枠に推薦されたって。面接さえ通れば、元のトップ企業への就職が確約されてたんだ。だが、当の朝に提類が見当たらなくなって、審査を受けられずに資格を失った。
あの、教授もひどく落胆してたよ。織さんも目を真っ赤にして資料を探してたのを見かけたが……結局、さな請け会社に入っただろう? あんなに優秀なのに、なんで妥協したのかずっと議だったんだが、族の面倒を見るために残ってくれたんだな」
昭男の脳裏に、激しい鳴が轟いた。 学の。 美結が「お姉ちゃんの散らかった類を片付けてあげた」と言って笑っていた、あのの記憶。 織はあの、泣きながら「資料がない、誰かが隠した」と訴えていたのだ。だが、自分も妻も、「妹を疑うな」「だらしないおが悪い」と鳴りつけ、を貸さなかった。
あの子は、無能だから元に残ったのではなかった。 美結に未来を奪われ、族のために何度も、何度も自分のを諦めていたのだ。
昭男は買い物を放りし、ってへと戻った。 リビングでテレビをぼんやりと見ていた佳代子と美結に向かって、息を切らしながら叫んだ。
「、関へくぞ! 織を連れ戻すんだ!」
「え……?」
佳代子が顔をげた。昭男は拳を震わせながら叫んだ。
「あの子に会いにくんだ! 俺たちがどれだけ残酷なことをしてきたか、謝らなきゃならん! 親とってくれるか分からんが、このままじゃ俺たちはじゃない!」
その、玄関のドアがき、憔悴しきった修平が入ってきた。
会社でも画の件が噂になり、居所を失いかけていた修平は、縋るような目で昭男を見た。