"断髪の夜に消えた七年目の花嫁" 第9話
発フロアに、プロジェクトリーダーの鳴のような報告が響き渡る。社員たちの顔にはらかな疲労と絶望が張り付いていた。 隣につ藤堂蓮が、眉をひそめて腕を組む。
「先方の望は確だが、あまりにも横暴だ。の昼までに現実な提案をさなければ、契約そのものが破棄されかねないぞ」
織は元の仕様と程表を素くめくり、赤ペンでいくつかの項目を鋭く囲んだ。その瞳には、混乱も揺も微もなかった。
「落ち着いてください。先方が納期を急いでいる本質は、私たちの残業をすることではありません。彼らが恐れているのは、本当になコア能が予定通りに稼働しないというリスクです」
織はホワイトボードのに歩み寄り、ペンをらせた。
「元の計画では、最である基幹データ連携のコア能を第3フェーズに配置していました。だから先方はになり、全体を倒しして結果をく見せろと迫っているのです。ならば、こうしましょう。コア能に直接響しない補助なUI能や帳票力のオプションをに削ります。最初の週でこのコア能だけを先リリースし、完全に作する結果を先方の経営陣の目ので見せるのです。残りの能は、検証を並しながら段階に組み込んでいきます」
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フロアのエンジニアたちがざわめいた。のベテラン社員が恐る恐るを挙げる。
「しかし林さん、それでは万が初期フェーズで具がた、すべてのリスクがこちらの責任になります」
織はペンを置き、全員の顔をまっすぐに見据えた。
「相が求めているのは、です。ならば、そのを先にこちらから差しすのです。リスクを恐れて何もしなければ、契約は破棄され、チームのこれまでの努力はすべての泡になります。蓮さん、やれますか?」
藤堂蓮は瞬目を見張り、次の瞬、頼もしい笑みを元に浮かべた。
「面い。すぐに構成を修正して、先方の部に初版をぶつけてみましょう。林さん、この方針の主導はあなたにお願いします」
「解しました。全員、今夜は集してコア能の切り分けをいます」
織の確で淀みのない指示に、沈み切っていたフロアの空気が変した。誰かの顔を伺い、理尽な悪に怯えながら過ごしていた々が、まるでい過の悪のようにえた。ここには、自分の言葉にを傾け、実力を正当に評価してくれる仲がいる。織の胸に、かつてない充実が満ちていった。
その頃、実の林では、常の歯が音をてて狂い始めていた。
「……なんだ、この塩辛さは!」
夕の噌汁を啜った父の昭男が、椀を乱暴に卓に叩きつけた。
「おい佳代子! 俺が血圧だってっててこんなものわせる気か! 塩分は控えろと医者に言われてるだろうが! 何飯を作ってきて、こんなことも分からんのか!」
母はエプロンを握りしめ、青ざめて謝覚えた。
「ごめんなさい、うっかりしてて……。でも、いつも通りに作ったのよ?」
美結が卵を箸で突きながら、鬱陶しそうにを挟んだ。
「お父さん、織がいた頃は、お父さんの分だけ鍋を分けてで作ってたのよ。お父さんはいじっぱりで言がいからって、あいつがこっそり汁を効かせて減塩料理を別に用してたの。お母さんが忘れるのも無理ないじゃない。からにしなよ」
「なんぞえるか! 何が入ってるか分からん! ……おい、それより俺の薬はどこだ? 圧剤だ! 毎週曜の朝には駄箱のに置かれていただろうが!」
昭男が鳴り散らすと、美結がため息をついた。
「織がていく、薬まで持っていったんじゃないの?」
「あの子がそんなもの持っていくわけないでしょう!」
母が引きしを漁り、枚の付箋を見つけて言葉を失った。そこには、織の丁寧な文字が残されていた。 『お父さんの血圧の薬、曜と曜の朝に必ずませてください。今週分で切れるので、所のクリニックで処方箋をもらってきてあげてね』
「……今、曜よ……。
あの子、ちゃんといて置いていってくれたんじゃないの……」
母のが震えていた。