みかん小説
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"あの道は、学校へ続いていなかった" 第10話

んでいなかった。

あの暗い部で、骨になっていたわけではなかった。

週末、私は朝の関越自をへらせていた。

崎を抜け、烏川にい古い宅に入った。

トタン根の平や、昭の佇まいを残す造アパートが並ぶ角。

指定された所には、緑の壁を持つ、階建てのモルタルアパートが建っていた。

郵便受けには、テプラで印字されたさな名札があった。

『片桐』

私は階段のでち止まり、息をえた。

掌が、じっとりと汗ばんでいた。

何を言えばいいのか。

、あなたの差ししたを、私の父が夫に渡しました。

あなたの助けを求める声を、私が塞ぎました。

そんな言葉を吐きして、何になるというのか。

許しを請うためか。

それとも、自分の罪悪を軽くするためか。

階へがり、番の部のインターホンを押した。

微かなチャイムの音が、ドアの向こうで鳴った。

しばらくの。

やがて、い靴音がづき、内側のチェーンがれる属音がした。

ドアが、センチほどいた。

「……はい」

隙から覗いたのは、髪を綺麗にろで束ねた、柄な女性だった。

いベージュのカーディガンを着て、首元になスカーフを巻いている。

目元の皺はかったが、その瞳は驚くほど澄んでいた。

佐野澄さんだった。

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の歳が流れていても、私はその顔を忘れることはできなかった。

「……突然申し訳ありません」

私の声は、ひどくかすれていた。

「森田と申します。……森田正雄の息子の、貴志です」

澄さんの眉が、わずかにいた。

彼女はドアの隙から、私の顔をじっと見つめた。

線が私の額から、目元、そして肩へとゆっくり移していく。

その、永のような沈黙が流れた。

彼女のが、震えていた。

ドアの取っを握る、浮きた血管のるい。

私はをげた。

「お話ししたいことがあります。……ご迷惑なら、すぐに帰ります」

澄さんは、しばらく何も言わなかった。

やがて、彼女はさく息を吸い、ドアを押しけた。

「……駅のくに、喫茶があります」

静かな、鈴の鳴るような声だった。

「そこでなら、お話しできます」

沿いの、全国チェーンのファミリーレストランに入った。

昼の内は空いていて、ボックス席の窓から穏やかなの陽射しが差し込んでいた。

澄さんは、運ばれてきたホットティーのカップを、両で包むように持っていた。

その指先は、の事や労働をじさせる、し節くれだった形をしていた。

「きくなりましたね」

澄さんが、ふっと微笑んだ。

皮肉でも、笑でもない。

ただの、懐かしむような笑みだった。

「面があります。……すぐに分かりましたよ。

青いランドセルを背負っていた、あの男の子だって」

私の胸が、痛烈に痛んだ。

「……澄さん。私は、謝らなければいけません」

私はテーブルのに両を置き、々とをげた。

「あののことです。あなたが窓から見せてくれた……私は、そこにかれていた文字をノートに写して、父に見せてしまいました」

澄さんのが、カップので止まった。

「父は、それを佐野の……あなたのご主に渡しました。私が余計なことをしたせいで、窓を板で塞がれ、あなたを余計に追い詰めてしまった」

私の界が、テーブルの目で滲んだ。

「申し訳ありませんでした。本当に……申し訳ありませんでした」

をげたまま、私は彼女のりや、罵声を待った。

、私のに堆積していたたいのような罪悪を、すべてぶつけられることを望んですらいた。

だが、返ってきたのは、擦れの微かな音だけだった。

「……顔をげてください、貴志さん」

私はゆっくりと顔をげた。

澄さんは、っていなかった。

ただ、窓のの青空を、くを見るような目で見つめていた。

「あののこと、覚えていてくれたんですね」

「……はい」

「読めなかったでしょう。子どもには、難しい字でしたものね」

澄さんは茶にをつけ、静かに息を吐いた。

「あれはね、私の姉の話番号でした。警察に話しても、あのは顔が広かったから、すぐに話が戻ってしまう。

だから、くにんでいる姉にだけ、らせたかった」

「どうして……どうして、私に見せたんですか」

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