"「母の十分は無駄」と笑った夫の失脚" 第12話
真奈の呼吸が、次第に浅くなっていくのが分かった。 画面を見つめる瞳から、粒の涙がポロポロと溢れ、タブレットの液晶のに落ちていく。
「……嘘でしょう?」
真奈の掠れた声が、静かな部に落ちた。
「お父さん、いつも言ってたじゃない。『俺は福祉の最線で、お寄りの命を支える仕事をしてるんだ』って……『誇りを持てる仕事をしなきゃがない』って、私に就職のアドバイスまでしてくれたのに……」
「真奈」
「これ、ただの詐欺じゃない……! の命を何だとってるの!? おばあちゃんを騙して、おばあちゃんのお友達を骨折させて……それで営業トップになって、温泉旅で威張ってたの……?」
真奈は両で顔を覆い、声を殺して泣き崩れた。 父親という偶像が、あまりにも醜い形で砕け散った痛みに、肩を激しく震わせている。
その、テーブルのの真奈のスマートフォンが、けたたましいバイブ音を響かせた。
画面に浮かびがる文字。
『お父さん』
真奈は涙を拭い、画面を睨みつけた。
「……真奈、なくていいのよ」
私が声をかけると、娘は静かに首を横に振った。
「ううん。る」
真奈は通話ボタンを押し、そのままスピーカーフォンをタップした。
『真奈か!? やっとた!』
スピーカーから、ヒステリックに甲い健の声が響き渡った。 酒の匂いまで漏れ伝わってくるような、濁った声だった。
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『お、母親と連絡取れたのか!? あの女、どこに隠れてるんだ! の通帳を勝に持ちしやがって、警察に被害届をしてやるからな! おい、おから言ってやれ! 母親に、今すぐ会社への訴えを取りげろって! おだって、父親が懲戒免職になったら困るだろ! 親の経歴に傷がついたら、おの会社でのだって——』
「お父さん」
真奈のく、え切った声が、男の喚き声を遮った。
『……え?』
「お父さんは、あのセンサーを売る、夜の見守りサービスをやめても丈夫だって、お寄りに嘘をついたの?」
話の向こうで、息をむ気配がした。
沈黙が、く淀む。
『な、何を言ってるんだ……それは営業の言葉の綾で、相が勝に勘違いを……』
「嘘をついたの? ついてないの? どっち?」
『真奈、お、誰の方なんだ! 俺はおを学までしてやったんだぞ! 自由ない暮らしをさせてやった父親に向かって、その態度は何だ!』
「答えてよ!」
真奈が叫んだ。 その瞳から、たな涙がこぼれ落ちる。
「嘘をついてないなら、どうして『ついてない』って言えないの!? どうして私の質問に真っ直ぐ答えてくれないの!?」
話の向こうから、荒い呼吸音だけが聞こえてくる。 言い訳も、恫も、すべてを失った男の、惨めな沈黙。
「……もういいよ、お父さん」
真奈の声から、が完全に消えった。
「私、お父さんのこと、ずっと尊敬してた。
自の父親だとってた。でも……もう度と、私のに現れないで」
『ま、真奈!? 待て、真奈! 俺の話を——』
ブツリ、と通話が切られた。
静寂が戻った部で、真奈は自分のスマートフォンを操作し始めた。 SNSのアプリをき、プロフィール画面を表示する。 そこには、昨の正に族で撮った写真が、ヘッダー画像として設定されていた。
真奈は躊躇うことなく、その写真を削除した。 初期設定ののアイコンに戻った画面を見つめ、娘はさく息を吐きした。
そして、私の顔を見げ、涙で濡れた瞳でかすかに微笑んだ。
「お母さん」
その温かいが、私の膝のにねられた。
「お母さん、もっとく……こんな、てくればよかったのに」
その言葉を聞いた瞬、私の目から、分の涙が静かに溢れした。
そのの夕方。 私のスマートフォンに、サン・ケアサービスの川から、通の業務連絡が届いた。
『佐藤由美様、田子様。 来週曜、午より、本社会議におきまして、被害を受けられた入居者様名、およびご族の皆様を対象とした「特別補償説会」を催する運びとなりました。 なお、本説会には、社内調査委員会の決定に基づき、元営業部・佐藤健の席を義務付けております。当がすべての事実関係を直接説し、謝罪をうとなりますので、ご席いただけますようお願い申しげます』
画面の文字を見つめる私の指先は、もう震えていなかった。