"「部屋はどこでも同じ」と1800万奪った息子の妻" 第10話
私は通話ボタンを押し、に当てた。
「……もしもし」
『母さんッ! あんた、本気で弁護士なんて雇ったのかよ! 内容証って何だよ! 千百万円全額返せって、どういう冗談だよ!』
息子の声が、受話器から溢れす。 声が裏返り、呼吸が乱れていた。 平の昼がり、おそらく会社の湯か非常階段からかけてきているのだろう。
「冗談じゃないわ。あなたたちが私のを奪い、おを使い込んだ。だから返してと言っているのよ。当たりのことでしょう」
『当たりなわけあるか! 美がパニックになって過呼吸で倒れそうなんだぞ! お義母さんだって、臓が痛いって寝込んじまったんだ! あんた、自分の族を殺す気かよ!』
族を殺す。 よくもそんな言葉が、そのから平然とてくるものだ。
「を棒扱いするに、まず美さんに座の細をさせなさい。残りの百万円はどこにあるの?」
私のたい問いに、健は瞬言葉を詰まらせた。
『そ、それは……居の付と……諸経費で……』
「付はせいぜい百万円でしょ。残りは?」
『……うるさいな! 今それを調べてるんだよ! 美だって悪気があったわけじゃないんだ! とにかく弁護士を取りげろ! 族同士で話しえば済む話だろ!』
「話しいなら、もう終わったわ。あなたたちが私を納戸に押し込み、から追いしたあのにね」
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『母さん!』
「杉先からの通にいてある通りよ。座の全履歴を示しなさい。それに応じないなら、裁判所へ民事調を申してるだけです」
私はそれだけ告げると、息子の弁解を聞かずに通話を切った。
指先が微かに震えていたが、それは恐怖からではなかった。 息子の声の奥に潜む、ある「異様な揺」をじ取ったからだ。
健は、本当に何もらなかったのだろうか? 美さんが勝にやったことだと、本気で信じているのだろうか?
その答えは、、弁護士事務所に届いた通の類によって、あまりにも残酷な形でのに晒されることになった。
「千代さん、相方の代理弁護士から、座の入細が提されました」
杉法律事務所の応接。 机のに置かれたのは、美さん名義の普通預座の、過半の取引履歴のコピーだった。
私はを乗りし、のに印字された数字の羅列に目を凝らした。
。 私の埼玉の自宅の売却代、千百万円が括で入されている。 確かに、この目で見届けたあのおだ。
だが、そのわずか。
。 【:9,000,000円 振込先:田亮太】
百万円が、綺麗に弟の座へ吸い込まれていた。 美さんのあの囁きは、真実だったのだ。
そして、そのの履歴を追った瞬、私の喉の奥からヒュッと乾いた息が漏れた。
:級具 480,000円 :ブランドリユース 320,000円 :エステサロン 180,000円 :カード決済(信販会社A) 650,000円 :カード決済(信販会社B) 420,000円 :カード決済(信販会社A) 580,000円
……何、これ。
ページをめくる私の指が、激しく震えした。
「千代さん、ここを見てください」
杉先の指先が、カード決済の引き落とし欄をトントンと叩いた。
「信販会社Aの細を、相方弁護士に照会させたところ、これは美さんのカードではありませんでした」
「……え?」
「健さんの、個名義のゴールドカードの引き落としです」
を鈍器で殴られたような衝撃だった。 界が瞬、真っに滅した。
健の? 息子が、自分のカードの支払いに、私のおを使っていた?
「健さんは、数から級計の分割払いや、の丈にわないゴルフの交際費、リボ払いの残債を抱えていました。毎の取り与では到底追いつかず、ボーナス払いでもりなくなっていた。美さんはそれをっていて、千代さんから振り込まれた千百万円のから、夫の借返済に毎数万円ずつ補填していたのです」
呼吸ができなかった。 臓がぎゅうと締め付けられ、肋骨の内側がきしむような激痛がる。
……らなかったんじゃない。 息子は、騙された被害者なんかじゃなかった。
健は、美さんが弟に百万円を横流ししたことこそらなかったかもしれない。 だが、母親の売却代が自分たちの座に入り、そこから自分の贅沢な借や活費が支払われていることを、完全に承ので黙認していたのだ。