"産後5日の病室で、娘を奪う義母が夫を殴りつけた" 第9話
ちろうとした夫婦の女性が、私のでち止まり、く、くをげた。
「本当に……申し訳ありませんでした。あなたの赤ちゃんは、本当にらしい、綺麗な顔をしていました。どうか……どうかそので、切に育ててあげてください」
涙で濡れたその言葉に、私は何も答えることができなかった。 許すことなどできない。 それでも、この夫婦が保を捨てて証拠を差しすを選んだことで、健太の退が完全に断たれたことだけは理解できた。
夫婦が警備員に付き添われて部をていくと、カンファレンスルームには苦しい静寂が戻ってきた。
「健太さん、義母さん」
事務が元の類をトントンと机に揃え、徹な声で宣告した。
「当院の顧問弁護士と協議した結果、本件はらかな私文偽造、ならびに未成者略取の疑いがあると判断しました。現点をもって、おの産科病棟へのち入りを切禁止します。今すぐ敷へ退してください」
「た、退って……! 私は赤ちゃんの祖母なのよ!?」
「退していただけない、建造物侵入および退罪で直ちに現犯通報します」
事務の毅然とした態度に、義母は息を呑み、それ以言葉を絞りすことができなかった。 世体と警察という言葉のに、義母の虚勢は完全に砕け散っていた。
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「……由紀」
組み伏せられた姿勢から解放された健太が、乱れた髪を振り乱しながら、私に向かってい寄ってきた。
「由紀、頼むよ……警察汰にだけはしないでくれ。俺たち夫婦だろ? やり直せるよな? あのだって、全部返せばいいんだろ!? おが『被害届はさない』って言えば、全部丸く収まるんだ!」
私はゆっくりとちがった。 痛む腹部をで押さえ、健太を、そして義母を、え切った差しで見ろした。
「丸く収まる……?」
喉の奥から、乾いた笑いが零れそうになった。
「私の実印を盗んで、私の名で偽の承諾を作って、まれて5の娘を300万で売りばそうとしたが……何を言っているの?」
「だ、だからそれは借が……!」
「私のったことじゃない」
私ははっきりと、言ずつ区切るように告げた。
「あなたたちの借も、世体も、これからのも……私と娘には、何つ関係ありません。度と、その汚いで娘の名を呼ばないで」
健太の顔が絶望に染まった。 義母はたださく震え、崩れ落ちたままを見つめている。
私はに背を向け、助産師に支えられながらカンファレンスルームのい扉へと歩きした。 戻りはできない。 元の活に戻るなど、最初からどこにも残されていなかった。
だが、部のドアノブにをかけた、その瞬だった。
——ヴ、ヴ、ヴ、ヴッ。
沈黙に包まれた部のに、けたたましいバイブレーションの音が響き渡った。
音の所は、テーブルのに置きりにされていた健太のスマートフォンだった。 警察を呼ぼうとした男性のから弾きばされ、画面に蜘蛛の巣のようなヒビが入った端末が、まるでき物のように気に震え続けている。
健太がハッとして息を呑んだ。 その顔から、先ほどまでの絶望をきするように、たな、底れぬ恐怖のが広がっていく。
着信を告げる液晶画面には、太い文字で、こう表示されていた。
【笠融(利息催缴)】
部の線が、その震えるスマートフォンに集まった。 健太はを伸ばそうとしたが、指先が激しく震えて画面に触れることすらできない。
やがて着信が切れると、髪を入れずにピコンとい受信音が鳴った。 ロック画面の央に、着メッセージのプレビューがポップアップする。
ヒビ割れたガラス越しに浮かびがったその文面を、私の目は残酷なほどはっきりと捉えていた。
『健太さん。本退院ですね。約束通り、今にガキを引き渡して300万回収できなければ、番でおふくろさんの実担保物件を競売にかける続きに入ります。逃げられるとうなよ』
臓が、ドクンとたく脈打った。
今。 番で、競売。
健太のタイムリミットは、すでにゼロを指していた。 追い詰められ、逃げを完全に失った獣が、次に何をしでかすか。
青ざめた夫の瞳が、狂気を孕んでゆっくりとこちらを振り向いた。