"産後5日の病室で、娘を奪う義母が夫を殴りつけた" 第6話
健太の顔が恐怖に歪み、スマートフォンを奪い取ろうとびかかった。 廊で助産師が鳴をげ、警備員を呼ぶアナウンスが病棟に鳴り響く。
胸ので、娘ががついたように泣き叫び始めた。 私は娘をく抱きしめ、混沌の渦ので、ただたく夫を見据えていた。
「やめろ……! 待て、警察だけは呼ぶな!」
健太が狂ったようにを乗りし、男性のからスマートフォンを叩き落とそうと腕を振り回した。
バチン、と鈍い音が病棟の廊に響き渡る。 男性が咄嗟にを引いたため直撃は免れたものの、から滑り落ちたスマートフォンがリノリウムのを滑り、ナースステーションのカウンターの角に激突した。
「きゃああっ!」
見らぬ女性がい鳴をげ、ベビーキャリーを抱きしめたままを塞ぐ。 病のあちこちから「何事!?」「警察!?」と怯えた声ががり、廊の空気は完全にパニックへと塗り潰された。
私は胸ので娘を押し潰さんばかりに抱きしめ、壁に背を擦りつけながらずさりした。 腹部の傷が、引き裂かれるようない痛みを放っている。 目のが真っになり、呼吸が過呼吸のように浅く乱れた。
(渡さない……絶対に、この子だけは渡さない……!)
その、でけたたましいブザー音が鳴り響いた。 助産師のが、ナースステーションの壁にある非常通報ボタンを躊躇なく押し込んだのだ。
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「全館警備、産科病棟へ至急応援願います! 暴力為が発しています!」
アナウンスが響き渡ると同に、々しい音がフロアの奥から複数づいてきた。 青い制を着た病院の警備員が、防犯用のさすまたを携えて廊を全力疾してくる。
「何をやっているんだ、れなさい!」
「違う、俺は父親だ! 族の話をしてるだけだろ!」
健太が警備員に両腕を掴まれ、必に抵抗して暴れ回る。 その顔は脂汗と涙でぐしゃぐしゃになり、かつて私がした穏やかな夫の面など微も残っていなかった。
「由紀さん、赤ちゃんをこちらへ!」
駆け寄ってきた助産師が、私の肩を力く抱き寄せた。 その瞳は、りとプロとしての徹な警戒に満ちていた。
「いや……取らないで……」
「丈夫です、奪ったりしません。施錠管理された児特定観察へ避難させます。母親であるあなた以のは、指本触れさせません。信じてください」
助産師の真剣な差しに、私のこわばっていた指先からしだけ力が抜けた。 そっと預けられた娘は、護師のによって厳な子ロックのついたナースステーションの奥へと運ばれていく。 娘の姿が自ドアの向こうに消えた瞬、の力が完全に抜け、私はそのにへたり込んだ。
「由紀さん!」
義母がすがりつくように駆け寄ってこようとしたが、警備員のがそのくを阻んだ。
「関係者以、づかないでください」
「関係者以って何よ! 私はあの赤ちゃんの祖母よ! 母親代わりに面倒を見るために来たのよ!」
義母は取り乱して喚き散らしていたが、その声には先ほどまでの傲さはなく、ただ自分の居所を失うことへの焦燥だけが張り付いていた。
「全員、医療全管理のカンファレンスルームへ移してください」
助産師が氷のようにたい声で言い放った。
「警察を呼ぶかどうかも含めて、病院と法務担当が対応します。誰、ここから帰しません」
案内されたのは、産科病棟の最奥にある防音扉で閉ざされたカンファレンスルームだった。
を基調とした無質な部の央に、い楕円形の会議用テーブルが置かれている。 私は壁際のソファにく腰掛け、助産師から渡された温かいお茶のコップを両で握りしめていた。 の震えは向に止まらない。 お腹の傷には、護師によって急遽しい保護テープが貼り直されていたが、鈍い痛みは骨の髄まで染み渡るようだった。
テーブルの向かい側には、青ざめた健太と、その隣でさく縮こまっている義母。 そしてしれた席に、チャコールグレーのコートを着た男性と、ベビーキャリーを元に置いた女性が並んで座っていた。 ドアのにはの警備員が腕を組んで直し、部のを完全に塞いでいる。