"台所へ追いやられた娘婿が、大晦日に義母を連れ去った夜" 第12話
自社の借を産に押し付けて、うちの蔵倉庫を担保にから追加融資を引きすための稼ぎよ」
帳のページをめくり、指先で特定の欄を示す。
「、会社の顧問弁護士を呼びなさい。美子の夫が持参した仮契約は、取締役会の決議を経ていないから会社法、無効よ。それから、メインバンクの融資担当課に、この未収の回収遅延リストをそのまま見せなさい。『債権者代位権を使して、娘婿の会社の資産を仮差し押さえする準備がある』と告げれば、は絶対に美子の夫の側にはつかないわ」
理恵は息を呑み、帳の数字を見つめていた。 震えるで、ボールペンを取りし、私の言葉を言句き留めていく。
「お母さん……どうして、そこまで」
「会社を助けるためじゃないわ」
私はめかけたお茶をんだ。
「、私とお父さんが、乗りの古の軽トラック台で始めた会社よ。あのがどれだけ傲で愚かになろうと、あんなハイエナのような男に骨の髄までしゃぶり尽くされて潰されるのだけは、私のプライドが許さないの」
理恵は顔をげ、私の目を見た。 その瞳から、迷いが消えていた。
「……分かった。私、やる。お父さんにも、姉さんたちにも、もう絶対に指図させない」
理恵はちがり、々とをげた。
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玄関で靴を履き、ドアノブにをかけたとき、彼女は振り返ってさく呟いた。
「お母さん。……ずっと、ごめんなさい」
夜ののへ消えていく女の背は、ほんのしだけ、かつての私のように真っ直ぐに伸びていた。
理恵がり、緊張の糸がぷつりと切れたのか。 その夜の夜、私は激しい胃の痛みに襲われ、布団のでのたうち回った。
喉の奥が焼け付くようにく、や汗が額から滝のように流れ落ちる。 の。 末の決断。 アパートへの転居。 張り詰めていた神経が、ここにきて気に鳴をげたのだ。
震える指でスマートフォンの縮ダイヤルを押した。 発信先は、救急ではなく、健司さんだった。
呼びし音が度鳴るか鳴らないかのうちに、話がつながった。
『母さん!? どうしました!』
「健司さん……すまないけれど……し、胃が……」
それ以は声にならなかった。 話を取り落とし、にうずくまる。
わずか分。 鍵でドアがき、作業着のままの健司さんがび込んできた。 夜配送の待だったのだろう。 たいの匂いとともに、彼が私を軽々と抱き起こした。
「母さん、しっかりしてください! 救急呼びましたから!」
識がのくで、私は健司さんの作業着の胸元をぎゅっと掴んでいた。 魚と軽油の匂い。 この、夫が「底辺の汚れ仕事」
と蔑み続けたその匂いが、世界で番温かく、かった。
診断は、度の胃潰瘍だった。 胃壁からの血が見られたため、緊急で内鏡術を受け、週の絶対静と入院を余儀なくされた。
病のい井を見げながら、私は点滴の管が繋がれた自分の腕を眺めていた。 誰もいない静かな個。 夫の入院している病院とは、わざと別の、沿いの民病院を選んでもらっていた。
入院から目の夕暮れ。 健司さんが、コンビニの袋を提げて病へやってきた。 には、私が頼んでおいた柔らかいタオルと、入院費の支払いの領収が入っていた。
「母さん、顔が良くなりましたね」
パイプ子に腰掛けた健司さんは、し無精髭の伸びた顔で微笑んだ。 目の周りには濃い隈があった。 夜はトラックをらせ、昼は私の続きやの回りの世話のために病院へ通い詰めてくれていたのだ。
「健司さん、本当にすまないわね。あなたの仕事にまで差し障り配穴をあけてしまって……」
「何言ってるんですか。俺がやりたくてやってるんです」
健司さんはそう言って、魔法瓶から温かいほうじ茶を湯呑みに注いでくれた。 湯気越しに見る彼の指先は、あかぎれと擦り傷だらけだった。
「……母さん」
健司さんが、改まったように姿勢を正した。 線を落とし、膝ので分いを固く組む。
「退院したのことです」
「ええ」
「あのアパート、やっぱりじゃ危険です。今回みたいに夜に倒れたら、発見が遅れるかもしれない。