"台所へ追いやられた娘婿が、大晦日に義母を連れ去った夜" 第3話
座に座る女の夫は持ち無汰にスマホをいじり、真紀は台所で荒々しく皿を洗う音をてている。
「お父さん、の朝ごはん、誰が作るのよ」
女の理恵が、満そうにを尖らせた。 理恵は夫の会社で総務と経理の伝いをしているが、実務のほとんどを母親に丸投げしてきただ。
「コンビニで何か買ってくりゃいいだろ。それより美子、伊豆のホテル向けの特選便、確認は済んでるんだろうな」
夫が女の夫に話を振る。 女の夫の系列ホテルには、元旦の昼から提供される極の然本マグロと伊勢老、それに朝獲れの真鯛が量に納品されるはずになっていた。 末始の目玉であり、この取引だけで数百万の粗利がる、会社の正最の板案件だ。
「ええ、お義父さんの会社にお任せしてますから。うちは板に指示をしてあるだけです」
「しろ。うちの仕入れに抜かりはない」
夫が胸を叩いた、そのだった。
座卓のに置かれていた夫の携帯話が、けたたましい子音を鳴らした。 画面に表示された名を見た夫が、慌てて背筋を伸ばす。 伊豆の老舗温泉旅館グループの、総料理からだった。 女の夫のホテルどころではない。 産品卸の売の割を叩きす、創業以来の取引先だ。
「はい、です! 総料理、晦にご苦労様です――」
広告
のいい営業用の声を張りげた夫の顔が、次の瞬、すっと青ざめた。
『……社ですか。先ほど、さんの事務所からけの緊急便に関する最終確認の面がファクスで届いたんだがね』
話の向こうから聞こえる声は、いつになくえ切っていた。
「は? 内の……事務所、ですか?」
『とぼけないでください。本、付で、限会社調達事務所との業務委託契約が満に伴い終するとの通です。内の緊急補正は先ほど完、以の仕入れ調および特殊便の配については貴社直接の対応になると。そうかれていましたよ』
夫の喉から、ひゅっと乾いた音が漏れた。
「い、いや、それは……何かの違いでして! 内がし取り込んでおりまして、すぐに確認させます!」
『違い? 冗談でしょう。うちの元旦用の然本マグロと特号の伊勢老、誰が競り落として誰が運ぶんですか? あれはの正規ルートじゃ揃わないから、さんが個に焼津の主や田の仲買と直で押さえていた特選枠でしょうが!』
話の向こうで、荒々しくをめくる音が響く。
『さんから連絡がありましたよ。「当事務所としての契約責任は本をもって完しました。以の納品については、産品卸の正規担当者へ引き継ぎ済みです」
とね。だが、お宅の担当者から切連絡がない。どういうことだ!』
「そ、それは……」
夫の額から、油のような汗が噴きした。 座敷の全員が、息を殺して夫を見つめている。
『朝までに田から旅館の板へ現物が届かなければ、正がの特別懐は全滅だ。損害賠償なんてもんじゃないぞ、さん。うちの板にを塗る気か!』
声とともに、話が方に切れた。
ツーツーという無質な切断音が、静まり返った座敷に響き渡る。 夫のから携帯話が滑り落ち、畳のに転がった。
「お、おい……理恵」
夫の声が、けなくずっていた。
「お、母さんから何か聞いてないのか!? 田のマグロの件だ! 誰が担当になってるんだ!」
理恵が怯えたようにずさりする。
「し、らないわよ! 仕入れの特注便は、全部お母さんが自分のパソコンとガラケーで直接やってたんだから! 会社の報には『調達完・配済』としかがってないわよ!」
「引き継ぎはどうしたんだ! 業務の引き継ぎは!」
「お母さん、ヶから『内で事務所を閉じるから、しい担当者をてて引き継ぎをしてくれ』って、お父さんに何回も言ってたじゃない! お父さんが『ババアの遣い稼ぎの真似事に付きってられるか』って、類も読まずにゴミ箱に捨てたんじゃないの!!」
理恵の鳴のような叫びが、夫の脳を直撃した。
夫の顔が、気へと変わっていく。 いしていた。