"26年尽くした家を出る私を、車椅子の娘は無表情で見送った" 第14話
元夫は倒れている娘を見ろし、指を突きつけて喚き散らしていた。
「に落ちて、じゃいがることもできなくて、無様にあの赤いボタンを押したんだ! 警備員まで呼びつけて、恥ずかしいとわねえのか!」
彩は、何も言い返さなかった。 毛布を胸元で固く握りしめ、濡れたフローリングを見つめたまま、刻みに肩を震わせていた。
顔面は蒼で、唇には血の気がなかった。 額には脂汗がり、恐怖と悔しさで、今にも張り裂けそうだった。
「ほら見ろ! 坂井さん、あんたも見たろ!」
元夫はろから入ってきたケースワーカーの坂井さんを振り返り、勝ち誇ったようにを広げた。
「たった初の夜だぞ! 朝まで持たなかったんだ! こんな役たずを税使って暮らしさせるなんて冗談じゃねえ! 契約は今すぐ解除だ! 荷物をまとめてに連れて帰る!」
「宮本様、し落ち着いてください」
坂井さんが割って入ろうとしたが、元夫は止まらなかった。
「に帰れば、お袋の部の隣で寝起きさせてやる! 子の乗りりくらいは俺が伝ってやるから、その代わりにお袋のオムツ替えと飯の用を伝え! それが障害者の分際で族に養ってもらうの務めだろ!」
障害者の分際。 養ってもらうの務め。
その言葉が、たい部の空気をナイフのように切り裂いた。
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彩の瞳から、粒の涙がボロボロと零れ落ちた。 声を殺して、震えながら、にポタポタと落ちていく。
「……っ」
私のが、無識にへようとした。
抱きしめてやりたかった。 「もういいのよ」「お母さんのところへいらっしゃい」と、あの細い体を抱きげて、私が守ってやりたかった。 私がアパートへ連れて帰れば、この子はもう誰にも罵倒されずに済む。 今まで通り、私が全部やってあげれば――。
そのだった。
に座り込んでいた彩が、ゆっくりと顔をげた。
涙でぐしゃぐしゃになった顔。 けれど、その唇から漏れたのは、すがりつくような助けを求める声ではなかった。
「……ふっ」
乾いた、さな笑い声だった。
「……何がおかしいんだ、彩」
元夫が眉をひそめる。
彩は涙を拭おうともせず、元夫と、そして入りにつ私を、真っ直ぐに見据えた。
「とも……同じ顔してる」
く、掠れた声だった。
「……え?」
「お父さんは、私を役たずって鳴って、自分の都のいい介護員に引き戻そうとしてる。……お母さんは、『ほら見なさい、私の言う通りにしないからよ』って顔をして、また私を自分の腕のに閉じ込めようとしてる」
胸の奥に、太い杭を打ち込まれたような衝撃がった。
「やっと……の見が致したね」
彩の声が、震えながらくなっていく。
「私は……初に失敗しただけだよ! ベッドから子に移る、スライディングボードの角度を違えて、滑り落ちただけ! 骨も折れてない! どこも怪してない! でがれなかったから、ルール通りに非常ボタンを押して、助けを呼んだの!」
彩の両が、マットを力任せに叩いた。
「初に度転んだだけで……なんで、全部終わりみたいに言われなきゃいけないの!? なんで、に連れ戻されて、誰かの具にならなきゃいけないのよ!」
叫び終えた彩の呼吸が、激しく乱れていた。 胸が波打ち、悔し涙が頬を濡らし続けている。
元夫は先でせせら笑った。
「屁理屈をこくな! で起きがれねえ奴が、暮らしなんかできるわけねえだろ! 宮本の敷居を跨がないって言うなら、今の活費も医療費の補填も、銭もさねえからな! 親の支援なしで、どうやってきていく気だ!」
元夫の最通告。 これ以ない、残酷な経済脅迫。
支援センターの職員も、坂井さんも、息を呑んで黙り込んでしまった。 公な支援制度があっても、親の完全な拒絶と敵のに、歳の度障害者が自するのは、現実としてあまりにも過酷な壁だった。
彩の顔から、再び血の気が引いていくのが見えた。 唇を噛み締め、絶望に押しつぶされそうになりながら、それでも首を横に振ろうとしている。
その姿を見た瞬。
私ので、の、ずっと私を縛り続けていた何かが、々に砕け散った。
「宮本さん」