"26年尽くした家を出る私を、車椅子の娘は無表情で見送った" 第3話
画面を伏せ、テーブルの端へ追いやる。
ったことではない。 あので起きるすべての都は、もう私の課題ではないのだから。
けれど、布団に入ってももできなかった。 目を閉じると、井の目が歪んで、子から滑り落ちそうになる娘の姿や、薬のみわせを違えて倒れる義母の姿が浮かんでは消えた。 呪いのように染み付いた「主婦」としての迫観が、私の神経をじわじわと削り取っていく。
朝の、私は械のように体を起こした。 顔を洗い、なネイビーのスーツに着替える。 今、やらなければならないことがあった。
午。 私は区役所の戸籍課の窓にいた。
番号札を握りしめ、たいプラスチックの子に腰をろす。 曜の朝のロビーは、引っ越しや各種続きの申請に来た々でざわついていた。
「番でお待ちの方」
械なアナウンスに呼ばれ、私はちがった。 窓の職員に、昨きげた婚届を差しす。
「こちらの確認をお願いします」
女性職員は慣れた様子で類を受け取り、指先で項目をなぞりながらチェックしていく。
「ご主様の署名、奥様の署名……証欄もお分、問題ありませんね。では、こちらで受理いたします」
「……受理、ですか。もう、終わりですか?」
「はい。備はございませんので、本付で正式に受理となります。
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婚届受理証が必なは、あちらの交付窓でお続きいただけますが、いかがなさいますか?」
「お願いします。今すぐしてください」
数料の数百円を支払い、渡された枚の公な用。 そこには、私と夫の婚姻関係が法に消滅した事実が、徹なフォントで印字されていた。
切れ枚。 の歳が、たった切れ枚でになった。
肩の奥底に張り付いていたたい鉛が、ほんのしだけ軽くなったような気がした。 けれど、にぽっかりと空いた巨な穴は、たい隙を通すばかりだった。
戸籍課をた私は、そのまま帰る気になれず、エレベーターで階へとがった。 フロア案内の板にかれた文字を見つめる。
『障害福祉課』
が、勝にいていた。 もう関係ない、あのたちがどうなろうと私のったことではない。 そうでは叫んでいるのに、、娘の体を支え続けてきた私の体は、染み付いた習慣を裏切ることができなかった。
彩の担当ケースワーカーである坂井さんは、相談ブースの奥からすぐに私に気づき、りで駆け寄ってきた。
「宮本さん! ああ、良かった……ちょうどご連絡しようとっていたところだったんです」
代半ばの柔らかな物腰の男性ケースワーカーだ。 彩がを卒業して以来、障害福祉サービスの計画作成でずっとお世話になってきただった。
「……坂井さん。ご無汰しています」
「お顔がすぐれませんね。ち話もなんですから、どうぞこちらのブースへ」
パーテーションで区切られたさな相談席に通され、私はパイプ子に腰掛けた。 机のには、アクリル板と消毒液のボトルが無質に置かれている。
「あの、坂井さん。個なことで申し訳ないのですが……実は昨、夫と婚いたしまして」
私は先ほど受け取ったばかりの受理証を、しだけ見せた。
「私はをました。娘の彩は、元夫の元に残ることになりまして……。あの子の居宅介護のヘルパーさんの派遣や、移支援の枠について、契約内容の変更が必になるのではないかとい、寄らせていただいたんです」
元夫は、福祉サービスの続きなど度もやったことがない。 受者証の更期すららないはずだ。 放っておけば、彩が必な支援を受けられなくなる。 そうってに説する私を、坂井さんはどこか痛ましそうな、そして酷く困惑したような目で見つめていた。
「宮本さん。……そのことなんですが」
坂井さんは元のファイルをパラパラとめくり、枚の類を取りした。
「実は、昨のお昼過ぎ、彩さんがこちらにいらっしゃったんですよ」
臓が、ドクンと嫌なね方をした。
「彩が? 誰と……元夫とですか?」
「いえ。ご友とおっしゃる、若い女性の方とご緒でした。