"6年介護した義父から「息子を信じるな」と電話が来た" 第2話
「……嫁さん」
義父の擦れた声が、喉の奥から絞りされた。
私は膝をつき、義父のたくなったを両で包み込んだ。
「お義父さん、来ました。丈夫ですから」
義父の指が、私ののひらを必に握り返してきた。麻痺の残る腕は膝のに置かれたままだが、の力は痛いほどだった。
「息子が……浩司が、類を持ってきよった」
義父は途切れがちな呼吸をえながら、言言を噛み締めるように言った。
「あのを、売ると言うんじゃ。わしの名で、産に話をつけたと。ここに判を押して、権利証を渡せと迫られた」
「を売る……? そんな話、私には言も……」
「わしは断った。母さんと建てて、おがもわしのの世話までして守ってくれただ。なんであいつの借のために放さにゃならんのだと鳴ってやった」
義父の唇が悔しさに震えている。
「そしたらあいつは……判を押さないなら、の朝番で県境の奥にある無認の施設へ放り込むと言い捨ててていきよった。そこなら誰も面会に来られない、おにも居所は教えないと……」
胸の奥がえ切っていくのをじた。
Threadsで義父が叫んだ「迎えに来てくれ」という言葉の裏にあったのは、体な監禁ではない。寄りのない所に隔され、判断力を奪われたまま、唯の財産である実を奪われようとしている老の、切実な抵抗だったのだ。
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「お義父さん、絶対に判を押しては駄目です。あのはお義父さん名義のものです。本の確ながない売却なんて、法に成しません。川さんも今こちらに向かっています。お義父さんが嫌がる移を、施設が勝にめることもできませんから」
私がそう告げると、義父の肩からふっと張りが抜けた。
しかし、堵が広がったはずの義父の表に、今度は別の、暗く湿ったが差した。義父は私の顔をじっと見つめ、何かを恐れるように線を彷徨わせた。
「……嫁さん。本当のことを、教えてくれ」
「何ですか?」
「お……本当に、もう俺の顔も見たくないと言ったのか?」
わぬ言葉に、私の考が完全に止した。
「え……? 私が、ですか?」
「浩司が言ったんだ」
義父の声が、痛ましげに細くなった。
「『なお子はもう限界だ。ノイローゼになって、親父の顔を見るだけで吐き気がすると泣き叫んでいる。これ以に置いたらあいつが狂ってしまうから、頼むから親父を連れていってくれと座された』と……」
ので、キーンという鋭い音が響いた。
「わしは……、おがどれだけ擦り減ってきたか見てきた。自分の体がかないばかりに、おのを奪っているのが申し訳なくてたまらなかった。だから、もしおがもう無理だと言うなら、どんな施設にでも入るつもりだった。
おに嫌われたまま厄介払いされるくらいなら、いっそどこへでもってやろうと、あいつのに乗ったんだ」
義父の目から、粒の涙が零れ落ち、膝のの毛布に染みを作った。
「でも……を売れと言われた、どうしても信じられなくなった。あの真面目なおが、このを売っていいなんて言うはずがない。おは本当に、俺を捨てたかったのか……?」
りよりも先に、激しい悪寒が背筋を駆けがった。
すべてが繋がった。
、夫が私に放った言葉が脳裏に蘇る。
『親父がな、もう嫁の世話になるのは耐えられないって言ったんだ。けなくてにたい、顔も見たくないから施設に入れてくれって頼まれた。もうおの顔は見たくないそうだから、会いにくな』
夫は、互いをいやる私たちの罪悪を利用したのだ。
私がの介護で抱えていた疲労と「義父に申し訳ない」という。そして義父が抱いていた「嫁に迷惑をかけ続けている」という負い目。その痛ましい隙にで踏み込み、を完全に引き裂いたで、孤した義父から実を巻きげようとしていた。
「お義父さん、聞いてください」
私は義父の両を真正面から握り直した。
「私はそんなこと、度も言っていません。浩司さんは私に『お義父さんがもう私の顔を見たくないと言っている』と嘘をついたんです。
を会わせなければ、お互いに捨てられたとい込んで、真相を確かめえないと踏んだんですよ」