みかん小説
本棚

"「ママって呼んじゃだめ」そう泣いた五歳の娘" 第8話

「健吾から、私たちの夫婦関係について、具体に何と聞いていたのですか」

莉奈は唇をく結び、それから途切れ途切れに話し始めた。

「……の頃から、お付きいをしていました。健吾さんは最初から、結婚していることも娘さんがいることも話してくれていました。でも……『もう何もから夫婦の会話はなく、寝も別で、完全にえ切っている』と」

「ええ。よくある言い訳ですね」

「信じていたわけではありませんでした。最初は、ただの遊びのつもりでしたから。でも、半を過ぎたあたりから、健吾さんが具体に婚の話をするようになって……『妻も婚には同している。ただ、娘がさいうちは経済な理由で籍を置いているだけだ』と聞かされました」

「そして、私もあなたがと会うことを承している、と」

「……はい」

莉奈は膝ので両をく握りしめた。爪の先がくなっている。

「私が、本当に婚する気があるのか、ただ都よく引き延ばしているだけじゃないのかと問いただしたんです。そしたら健吾さんが、『妻も納得している証拠に、今度の保育参観に緒にこう。にもしずつ慣れてもらいたいと妻も言っている』って……」

「その言葉を、あなたは疑わなかったのですか?」

私の問いに、彼女は息を詰まらせた。

「……しは、おかしいといました。

広告

でも、健吾さんが園の参加申請もちゃんとしておくからと言って……実際に親族枠で通ったのを見て、本当なんだとい込んでしまいました。自分が都のいい嘘を信じたかっただけです」

「そうですね。都のいい嘘です」

私はバッグから、あのさなピンクのウサギのマスコットを取りし、テーブルの央に置いた。

莉奈の瞳が、驚愕に見かれた。

「これ、覚えていらっしゃいますよね」

「あ……」

「が、幼稚園のカバンの底に隠していました。母親に見つかったら母親が泣いてしまうから、絶対にに持って帰るなと、健吾に言われていたそうです」

莉奈の顔から、みるみるうちに血の気が引いていった。

「あなたと健吾が週末、公園やパンケーキのにったことも、から聞きました。そのたびに健吾は、歳の子どもに『ママには内緒だ』と言い聞かせていたそうです。あなたが買い与えたこのウサギも、子どもにとっては父親の嘘を守るための荷でしかなかった」

「私は……そんなつもりじゃ……」

「らなかった、では済まされません」

私は声を荒らげることなく、徹に言葉を紡いだ。

「あなたは健吾に騙されていた被害者かもしれない。でも、歳の子どもがいるとりながら既婚者と関係を持ち、母親から排除された参観に平然と席し、子どもの膝枕をして母親気取りをしていた。

その為が、あのさなにどれほどの恐怖と負担を与えたか、像したことはありますか?」

「……っ」

莉奈の目から、粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ち、テーブルクロスに吸い込まれていった。

「『ママって呼んだら、あのお姉さんが泣いちゃうから』。が私にそう言って謝ったとき、あなたがどんな顔でそこにっていたか、私は忘れません」

莉奈は肩を震わせ、両で顔を覆った。

「申し訳……ありませんでした……本当に、ごめんなさい……」

「謝罪は結構です。あなたへの慰謝料請求や法な責任については、追って代理を通じて面で通します。会社の取引関係を利用してこのような関係を続けたことについても、相応のけじめはつけていただきます」

私が席をとうとすると、莉奈は濡れた顔をげ、すがるように声を絞りした。

「健吾さん……昨、奥様が帰られた、何て言ったといますか?」

私はを止め、ややかに彼女を見ろした。

「何と言ったのですか」

「『美咲がヒステリーを起こして全部台無しにした』って……『あいつは昔からい込みが激しくて、を洗脳してるんだ』って鳴ってました。私にも、『しのだけしてくれれば、あんな女とはすぐに別れて慰謝料もきっちり取ってやるから』って……」

莉奈は自嘲するように元を歪めた。

「あのは、誰も見ていません。

奥様のことも、ちゃんのことも……私のことさえも。自分の都のいいように周りを配置して、誰かがその通りにかないと、全部相のせいにするんです。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: