"「お父さんの同僚ですか?」と、夫の娘は微笑んだ" 第9話
「わかりました。極めて静でいらっしゃる。それはいです」
杉弁護士は帳をき、ペンをらせた。
「まず、退職についてです。来週振り込まれる予定の退職ですが、のうちにわたる貞為があったとしても、婚姻期に積みてられた部分については、原則として夫婦の共財産とみなされます。奥様にはその約半分を受け取る正当な権利があります。ご主が勝に座から引きして隠蔽しないよう、まずは会社側への照会と、必であれば庭裁判所を通じた仮差押えの続きを検討しましょう」
「マンションの売却についてはどうでしょうか。主は産に査定を依頼していたようです」
「共同名義であれば、奥様の同がなければ売却の契約は成しません。もしご主が単独で話をめている産会社があるなら、すぐに内容証を送って、共持分者としての同を通告します。これで、ご主が勝にを現化することは完全に能になります」
「相の女性……川理恵さんへの慰謝料はどうなりますか?」
私がそう尋ねると、杉弁護士はしだけ表を曇らせた。
「そこが、この件の特殊な点です。法に言えば、既婚者であることをらず、かつらなかったことに過失がない、相の女性に対する貞の慰謝料請求は認められないケースがいのです。
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昨夜の様子をお伺いする限り、川理恵さんもまた、ご主から『独である』と信じ込まされていた被害者である能性がい。もしそうであれば、請求の矛先はすべて、双方を騙し続けていたご主に向けるべきでしょう」
「ええ」
私はく頷いた。
「理恵さんからおを取るつもりはありません。昨夜の彼女の顔を見て、分かりました。あのもまた、修の勝な嘘にを縛られていた被害者です。私の目は、復讐として誰かを破滅させることではなく、自分のを正当に清算し、私のこれからのを守ることです」
「素らしいご判断です」
杉弁護士は力く頷いた。
「では、直ちに受任通を作成しましょう。今にご主の携帯、およびご自宅宛てに通を送り、今の財産分与、婚協議の切の交渉窓を当事務所に本化します。ご主には、切の財産処分を禁じる旨を記します」
事務所をると、昼がりのの陽射しがを照らしていた。
胸のにあったたい塊が、しだけ輪郭を帯びて、確かなみを持った覚悟へと変わっていた。
私は携帯話を取りし、昨夜、奈緒さんから送られてきていたショートメッセージをいた。
『昨は本当に申し訳ありませんでした。母はもせず、父から送られてきた荷物をすべて段ボールに詰め直しています。
母から、奥様に直接お伝えしたいことがあると言っています。もし許していただけるなら、もう度だけお話しさせていただけないでしょうか』
私はち止まり、駅広の雑踏ので、静かに返信を打ち込んだ。
『理恵さんのお気持ち、謝します。荷物のことは気にしないでください。これからは、あなたと奈緒さんがどうきていくかを番に考えてください。私も、自分のを取り戻すためにき始めました』
送信ボタンを押した瞬、私の携帯が激しく震えた。
画面に表示された名は、「修」だった。
度く息を吸い込み、私は通話ボタンをスワイプした。
『美紀! どこにいるんだ!? にいないじゃないか!』
夫の受話器越しの声は、りと焦燥で完全に裏返っていた。
『さっき産から連絡があった! お、何か余計なことを吹き込んだのか!? 売却の査定がストップしたって言われたぞ! それに、おの机のに置いてあった通帳……おい、定期預の続きはどうなってるんだ!?』
男は、私がをているに、私の机を漁っていたのだ。
昨夜の涙の座など、やはりただのそのしのぎだった。私がいない隙に、しでも自分に都よくをかそうとしていたのだ。そのあまりの愚かしさに、私はため息すらなかった。
「修さん」
私の静かな声に、話の向こうの鳴り声がぴたりと止まった。