"「お父さんの同僚ですか?」と、夫の娘は微笑んだ" 第7話
「ふざけないで」
私のからた言葉は、自分でも驚くほどく、たかった。
「傷つけたくなかったんじゃない。あなたはただ、私を傷つけている現を、私に見られたくなかっただけよ」
夫の息が止まった。
「自分が悪者になって責められるのが嫌だから、定まで嘘で塗り固めて、最は私の未来を勝に買い叩いて、静岡へ逃げすつもりだったんでしょう? 私のを、あなたの勝な都でなかったことにしようとしたのよ」
修は何も言い返せなかった。その沈黙こそが、私の言葉が図であることを何よりも雄弁に物語っていた。
理恵さんは、テーブルのの夫の姿を、まるで汚物を見るような目で見つめていた。
彼女の目からは、涙すら消え失せていた。そこにあるのは、信じてきた男に対する、底れない侮蔑と絶望だけだった。
「修さん」
理恵さんが静かに言った。
「あなたが送ってきた荷物、全部着払いで京の自宅に送り返すわ」
「理恵! 待ってくれ、話せばわかる!」
「話すことなんて何もないわ」
理恵さんはきっぱりと言い放った。
「私はね、あなたが独だから、過の失敗を乗り越えて緒にきていこうとしたの。でも、あなたはただの卑怯な嘘つきだった。奈緒の父親だからって、して信じてきた私が馬鹿だった。
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奥さんから夫を奪って、平気な顔をして暮らしていた棒猫にされてたなんて……んでもにきれないわ」
「ママ……」
「奈緒、帰るわよ」
理恵さんはちがった。その取りは微かにふらついていたが、修に差し伸べられたを酷に払いのけた。
「触らないで。度と私たちのに現れないで」
「理恵! 奈緒!」
修がちがり、すがりつこうとしたが、理恵さんは振り返りもしなかった。奈緒さんは、ちる際、私に向かってく、々とをげた。
「奥様……本当に、ごめんなさい」
「いいのよ、奈緒さん」
私は穏やかに、けれどはっきりとした声で答えた。
「あなたはお父さんのお祝いに来ただけ。何も悪くないわ。気をつけて帰りなさい」
奈緒さんは唇を噛み締め、涙を拭いながら、母親の背を追ってラウンジをてった。
自ドアが閉まり、の姿が見えなくなると、テーブルには私と修だけが残された。
修は力なく子に座り込み、両で顔を覆った。
「終わった……全部、終わりだ……」
その男の呟きを聞きながら、私はえ切った茶を筋だけ喉に流し込んだ。苦だけが舌のに残った。
終わったのではない。
私にとっては、これが始まりだった。
「修さん、帰りましょう」
私はちがり、バッグを肩にかけた。
「私たちのへ。まだ、話さなければならない現実がたくさん残っているわ」
タクシーのは、息が詰まるほどの沈黙に支配されていた。
修は窓のをぼんやりと眺め、私は背筋を伸ばしてを見つめていた。
自宅のマンションに着いたのは、夜のを過ぎていた。井の築のマンション。エントランスのかりが、いつもと変わらず私たちを迎えた。だが、扉をけてを踏み入れた瞬、そこはもう私が守ってきた「が」ではなくなっていた。
リビングに入ると、廊の隅に、ガムテープで封をされた段ボール箱がつ置かれているのが目に入った。
夫が「品をリサイクルショップに送る」と言っていた箱だ。
私は屈み込み、躊躇なくその箱のガムテープを引き剥がした。
「美紀、何をするんだ!」
修が慌てて止めようとしたが、私は彼を無して箱のを引っ張りした。
番に入っていたのは、夫が休に好んで着ていた質なカシミヤのセーターだった。そのには、彼が切にしていたカメラのレンズ、そして、分いファイル。
ファイルをくと、静岡の産から取り寄せた古戸建ての物件資料が何枚も挟まれていた。ご丁寧に、最寄り駅から理恵さんのマンションまでの徒歩ルートが赤いペンでき込まれている。
「本当に、準備万端だったのね」
私はファイルをテーブルのに放りした。
バサリとい音が響く。
「美紀、悪かった……本当に魔が差したんだ。やり直そう。俺にはおしかいないんだ。