"「お父さんの同僚ですか?」と、夫の娘は微笑んだ" 第6話
「じゃあ、この半、あなたが私に言っていたことは何だったの? 『定になったら、京のマンションを売って、物価のい方へ移しよう』って。『美紀もパートを辞めて、これからはのでのんびり暮らそう』って、何度も何度も私に言っていたのは、全部何だったの?」
理恵さんが怪訝そうに顔をげた。
「マンションを売る……? 修さん、あなた、会社の社宅を引き払うからって……」
「社宅?」
私は理恵さんを見た。
「違います。私たちはに、郊に用の分譲マンションを共同名義で買いました。私がパートにて活費を補いながら、でローンを返し続けてきた、私たちのです。主はそれを、会社を辞めたら売却すると言っていたんです」
理恵さんの顔から血の気が引いていくのが分かった。彼女は震えるでバッグを抱え直した。
「そんな……修さんは、京ではずっと会社のさな借りげ社宅にんでいて、定と同にそこをなきゃいけないから、退職で静岡の私たちののくに古の軒を買うか、私たちのマンションのローンを括返済して同居するって……そう言ってました」
パズルの最のピースが、音をてて嵌まった。
すべてが繋がったのだ。
夫は最初から、定退職という節目を、私との活を完全に精算し、理恵母子の元へ逃するための「切り替えポイント」
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として計画していたのだ。
私には「で別の所で暮らすために今のを売る」と信じ込ませ、パートを辞めさせ、まいを処分させて元如にする。そして退職と売却益の主導権を握ったまま、何らかの理由をつけて私に婚を迫るか、あるいはアパートにで放りす算段だったのだ。
方の理恵さんには、「定でようやく単赴任が終わる」と偽り、何わぬ顔で第のの父親として収まるつもりだった。
この数ヶ、夫が「実の遺品理を伝う」と称して、自分の趣のゴルフバッグや、仕ての良いスーツ、価な専をしずつ段ボールに詰めて発送していたのをいした。
あれは実に送っていたのではなかった。
静岡の、理恵さんのに送っていたのだ。
「修さん」
私は静かに問いかけた。りで震えることもなく、ただ事実の残酷さを確かめるように。
「荷物を静岡に送っていたのね」
夫は答えなかった。ただ、額から流れる脂汗をハンカチで拭おうともせず、を半きにして震えていた。
「届いていました」
理恵さんが、掠れた声で言った。
「先から、箱……。これからはずっと緒にいられるから、自分の荷物をしずつ移しておくねって……」
「ママ、もうやめて……!」
奈緒さんが顔を覆って泣き崩れた。
「気持ち悪いよ……! パパ、なんでそんなことできるの!? 何も、私たちを騙して、この奥さんのことも騙して……! 私、今パパに束渡したんだよ!? 会社のたちので、『自のお父さんです』って顔して笑ったんだよ!? 私、自分が何をしたか分かんないよ……!」
奈緒さんの慟哭が、静かなラウンジに痛々しく響いた。ホテルの従業員がくから配そうにこちらを伺っている。
「奈緒、すまない……美紀、おにも本当にすまないとっている」
修はテーブルにをつき、額を擦り付けるようにしてを屈めた。
「俺だって、こんなにしたかったわけじゃないんだ。最初は、ほんの来だった。だが奈緒がまれて、責任を取らなきゃいけないとった。おを捨てることもできず、あの子たちを見捨てることもできず……気がついたら、戻りできなくなっていたんだ」
「戻りできなかった?」
私はややかにその言葉を繰り返した。
「もあったのよ。修さん。あなたが引き返すチャンスは、何千回、何万回とあったわ。奈緒さんがまれた、学に入った、成した……いくらでも本当のことを打ちけて、責任を取る会はあった。それをしなかったのは、あなたが卑怯だったからよ」
「美紀……俺は、おを傷つけたくなかったんだ」
修はすがるような目を私に向けた。
「おには何の落ち度もなかった。だから、せめて定までは、何自由なく暮らさせてやりたかったんだ」