"「2階は貸さない」と告げた母と、解約済みの息子夫婦" 第9話
台所に並んだ3枚の見積
翌の夕方、隆之はひとりでやって来た。
仕事帰りのスーツ姿だった。
鞄から取りしたのは、引っ越し業者の見積3枚と、産会社から渡された取り図だった。
「母さん、これ見てよ」
隆之は資料を卓へ広げた。
「今と同じ学区で、すぐに入居できる物件がないんだ」
私は図面を見た。
現より1部ない賃貸マンション。
賃は今より2万円ほどい。
もう1枚はしく、通学が変わる所だった。
「学を変えないなら、これが現実なんだ」
隆之は賃の欄を指した。
私は尋ねた。
「敷や礼は?」
隆之は別のを見せた。
「初期費用もかかる。引っ越し代まで入れたら、まとまった費になるよ」
私はうなずいた。
「そうでしょうね」
隆之は私を見た。
「だから、最初から母さんのにめればよかったんだ」
私は資料を置いた。
「隆之」
「何?」
「その計画は、私の返事をもらってからてるべきだったわ」
彼は黙った。
私は続けた。
「あなたたちは、賃が浮くことと、陽菜の送り迎えを頼めることを最初から予定に入れていたでしょう」
「族なんだから、助けうつもりだった」
「それなら、私があなたたちに何を頼めるかも話しうはずじゃない?」
隆之はし困った顔をした。
「何かしてほしいことがあるの?」
私は答えた。
「今すぐ何かをしてほしいわけじゃないの。
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でも、あなたたちは『見守りになる』と言いながら、私がどう暮らしたいかを聞かなかった」
隆之は取り図を眺めた。
私はお茶を入れ直した。
「放課に陽菜を預ける方法は、ほかにないの?」
「学童は学になると利用しにくいって、美穂が」
「申し込みの条件や空き状況は確かめたの?」
隆之は首を振った。
「まだ」
「塾の送迎サービスは?」
「それも調べてない」
私はうなずいた。
「まず調べてみなさい。学や自治体の制度も、利用できるものがあるかもしれないから」
隆之は黙っていた。
「夜の迎えは、あなたたち夫婦で分担できない?」
「俺も残業があるから」
「毎同じに残業しているわけではないでしょう」
隆之はし考えた。
「会社に相談してみる」
私は続けた。
「それでもどうしてもがりないは、もって言ってくれれば、できる範囲で伝うわ」
隆之は顔をげた。
「本当に?」
「ええ。ただし、私の予定もあるの」
「分かった」
しばらくして、隆之は見積をまとめ始めた。
の端が折れていたので、私はで伸ばした。
「お母さんは、俺たちが嫌いになったわけじゃないんだよな」
私は驚いた。
「そんなこと、あるわけないでしょう」
「じゃあ、どうして緒にめないんだろうってって」
私は息子を見た。
「好きだから、いつでも緒に暮らせるわけじゃないのよ」
隆之はさくうなずいた。
「そういうものかな」
私は答えた。
「そういうこともあるの」
隆之が帰った、私は台所の子へ座った。
話しいは終わっていない。
けれど、息子は初めて、自分たちで調べたり相談したりする必があると気づいたようだった。