"捨てられた整備士、沈黙の咆哮" 第28話
とはいえ――仕事のやり方は、根本から変えざるを得なかった。
田美紀という職は、相変わらず遅かったからだ。
で何台ものをベルトコンベアのように捌くことなど、彼女のき方にかけて到底能だった。
週ほど考え抜いた末、笹本は事務所の入りのガラス窓に、枚のい模造を貼りした。
墨とを使い、太い文字で、わずかだけがかれていた。
『数のお約束はできません。 代わりに、原因は必ず突き止めます。 直らないは、直らない理由をお伝えします』
その傲とも取れる貼りを見て、眉をひそめて踵を返す客も何かいた。
だが、何軒ものディーラーをたらい回しにされ、絶望の淵でわざわざ方から積載を仕ててやってくる客たちは、そのの文字をにすると、誰もがく、無言のまま頷くのだった。
このは、もはや「速さ」や「さ」で選ばれる所ではなくなったのだ。
端田さんは、あの命を救われた軽自に乗って、今でも週に度はのを通った。
「笹本さんとこ、いつのにか全国区の名になっちまったなあ!」
そう言って豪に笑いながら、作業台のに温かい缶コーヒーを本置いていくのが、老の課になっていた。本は笹本の、そしてもう本は、田の分だった。
輪のからいてきた田が、両でその温かいスチール缶を包み込み、指先に温もりが戻ってくるのを待ってから、々とをげて「ありがとうございます」
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と礼を言う景を、笹本はいつも煙をくわえながら目を細めて眺めていた。
田は、甘ったるいだけのその缶コーヒーを、まるで級なワインをに含むかのように、ゆっくりと、切そうにわうのだった。
の設備も、しずつまれ変わっていった。
井でずっと切れたままだった本の蛍灯は、真しい昼の直管へと交換され、作業の隅々までるいがき届くようになった。
油圧シリンダーが抜けてかなくなっていた側のリフトも、台目の備の依頼が入った翌に、品の油圧ホースとパッキンを取り寄せて笹本自ので修理を完させた。
榊原善夫は、に度、あの紺の暁2000クーペをらせてへと顔をした。
アイドリングの鼓を響かせたまま、事務所で笹本と田を交えて分ほど世話をし、そして満そうにアクセルを踏み込んで帰っていくのだった。
その排気音がくの並みへと消えていくまで、田はのどこにいても必ずを止め、じっとを澄ませていた。する械が今も正しく呼吸していることを確かめてから、彼女は再び自らの作業へと戻っていくのだ。
季節はめぐり、事務所の片隅の油ストーブには古い毛布が被せられ、部の隅へと片付けられた。
田美紀がこのの敷を踏んでから、ヶが過ぎた初の午のことだった。
郵便配達のバイクがった、ポストのに通のい封が届いていた。
差の欄には、あの見慣れた鮮やかな青いロゴマークが印刷されていた。
『原オートサービス・本社事部』。
作業台の端でそれに気づいた田は、ペーパーナイフで静かに封を切り、に入っていた枚の類に黙って目を通した。
そして、何も言わず、その類を静かに裏返して作業台の隅へと置いた。
夕方、の作業を終えた笹本は、作業着のポケットにを突っ込みながら、そのをに取った。
そこには、田美紀に対する『復職の正式打診』の文面が並んでいた。
役職は、本社直轄の特殊備技術指導員。 担当は、各拠点からがってくる難関トラブルシューティングの統括。 そして提示されていた俸の数字は――笹本が今、彼女に支払うことができている料の、優に倍を超える額だった。
笹本は類を丁寧に折り畳み、作業台のへと戻した。
「……いいのか?」
笹本は、リフトので古いワゴンの回りのグリスアップを終え、半を滑りさせてきた田を見ろした。
「うちなんかにいるより、料はずっといいぞ。待遇だって、向こうの方が何倍もだ。