"捨てられた整備士、沈黙の咆哮" 第21話
その答えを聞いた瞬、川は喉を反らせて、甲い笑い声をいっぱいに響かせた。その嘲笑は、錆びたトタン根に反響し、障りな余韻を残した。
「! たった台の旧に、だと!?」
川は腹を抱えるようにして笑い転げた、呆れ果てた顔で笹本の方を向いた。
「笹本さん、悪いことは言いませんよ。うちの会社ならね、こんな骨董品の、で見極めをつけますよ。直るか直らないか、で結論をして、直らないなら『うちの設備では能です』とお客様にお返しする。それが、代な備の持つべき誠ってもんでしょう」
笹本は腕を組み、え切ったい声で問い返した。
「……そので、本当の原因は分かるのかね」
川は肩をすくめ、両を袈裟に広げてみせた。
「分からないものは、分からないんですよ。世のには直らない械だってあるんです。だからこそ、めに見切りをつけて、次のお客様のをリフトに乗せる。それがビジネスってもんです」
そう言い放つと、川は再び田へと向き直った。その目は、来の悪い劣等を見す酷なを宿していた。
「田、おは昔から何ひとつ変わってないな。何が壊れてるのか分からないからって、いつまでも、いつまでも械にしがみついて……。自分の作業のせいでライン全体が止まっても、平然とした顔をしてを触り続けていた。
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だからおは、どこへっても使えないんだよ」
はっきりと、滑舌の良い、誰のにも届く声だった。
鳴り散らしているのではない。叱責しているのですらなく、誰もがるかしようのない事実を、事務に確認してやっているだけだという残酷な響きがあった。
田のが、力なくすっとがった。
指先から力が抜け落ち、握りしめられていた属製のマイクロメーターが、元から滑り落ちた。
ガシャン――ッ!
コンクリートのに叩きつけられた精密測定器が、甲い鳴のような音をててねた。
しかし、田はそれを拾おうとはしなかった。
彼女の顔から、急速に血の気が引いていくのが見えた。唇が刻みに震え、肩が浅くし、呼吸が苦しげに乱れていくのが、数メートルれた笹本の位置からでもはっきりと見て取れた。
その打ちひしがれた姿を見て、川は底満したようにを鳴らすと、笹本に向き直った。
「笹本さん、同業者として忠告しておきますよ」川の声には、親なアドバイスを装った底の悪い嘲笑が滲んでいた。「こんな効率の悪い、組織の癌みたいな女を囲ってるから、あんたのも潰れる羽目になったんじゃないですか?」
のの県を、型トラックが台、い響きをてて通り過ぎていった。
その排気音が完全にざかり、静寂が戻ってくるまで、笹本は言もをかなかった。
笹本は両の軍をゆっくりとし、作業台のに静かに置いた。
そして、音を忍ばせるようにして田のまで歩み寄ると、に落ちていたマイクロメーターを拾いげた。のひらでその表面についた埃を丁寧に払い落とすと、固まったまま震えている田のえ切ったを自らのでき、そのに測定器をしっかりと握らせた。
「……川さん」
笹本は顔をげ、川の目をまっすぐに見据えた。
「うちはな……最まで見るんでね」
それだけだった。
言い返す言葉なら、喉元までいくらでも競りがってきていた。端田さんの軽自のフレームに潜んでいたセンチの亀裂のことも、運送の軽トラのゴムホースの内側のひび割れのことも、そしてこので田が突き止めた、暁のミリの歪みのことも。
だが、笹本はそのすべてをにしなかった。
この男に何を説したところで、数字とでしか世界を測れないに言葉が届くはずがないことが、痛いほど分かっていたからだ。
何よりも――言葉には、それを置くべきふさわしい所と瞬がある。
今、このには、まだ暁のエンジンが奏でる本物の咆哮がしていなかった。
川は瞬だけ虚を突かれたようにを噤んだが、すぐに先でせせら笑った。