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"捨てられた整備士、沈黙の咆哮" 第18話

とでも言うような、至極当然の物理法則をにしただけの静けさだった。

笹本は何も答えず、子を蹴てて事務所をた。

え切った作業の奥へと歩みをめ、埃をかぶったの褪せた油布の端を掴むと、気に引き剥がした。

バサリという音とともに、もうもうとい埃がいがった。

現れたのは、先代の父親が、このの臓として油を注ぎ、鉄を削りし続けてきた、無骨な旋盤だった。緑の鋳鉄のボディはあちこちの塗装が剥げ落ち、切削油の受け皿の隅には、何もに削られた鉄の切が赤茶に固まってへばりついていた。

笹本は操作盤のメインスイッチに指をかけ、瞬だけ躊躇したのち、い切ってそれを押し込んだ。

ブオォォォン――。

くいモーターの唸り声とともに、背面のゴムベルトが勢いよく回転を始めた。チャックと呼ばれる回転軸が、鈍いの残像を描いて回転し始める。

その回転音をにした瞬、笹本の背筋の筋肉が、まるで条件反射のように勝に引き締まった。

を卒業してから、笹本はこの鉄の塊のにち尽くし、隣で目をらせる頑固な父親から、にタコができるほど鳴り散らされながら鉄の削り方を叩き込まれたのだ。

最にこの械のハンドルを握ったのが何だったか、もはやいせもしなかった。

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「……くんですか?」

いつのにか、田が笹本の真横にっていた。

「くよ」笹本はスイッチを切り、回転が惰性で落ちていくのを見つめながら言った。「くが、俺の腕の方は保証しねえぞ。……これを使って、デスビのオフセットブラケットを削りすとして、体何かかる」

田はので緻密な程表を組みてるように、数秒目を伏せた。

「削って、現にわせて、マイクロメーターで測定します。角度がコンマミリでも狂っていれば、最初から削り直します。……最でも、はいただきたいです」

「……」

笹本は事務所のカレンダーをい浮かべた。

赤マジックの丸印まで、残された数はあとしかなかった。

その貴なを費やして得られるは、材料費を差し引けば、数万円の賃にも満たないだろう。同じ、軽トラの検備を台こなせば、その倍以の現が確実にに入るのだ。卓を叩くまでもない、商売としては完全に落第の選択だった。

それでも――。

翌朝、夜けとともにへやってきた笹本は、すでに誰に言われるでもなく、ボロ布に灯油を浸し、旋盤のベッドとチャックの周りの錆を黙々と磨き落としていた。

材料となる特殊鋼の丸棒を調達してきたのは、田だった。

元の属材料へ自ら軽トラをらせ、自分の財布からなけなしの現を叩いて買ってきたのだということを、笹本がったのは、すべての作業が終わったずっとのことだった。

設計図は、田の学ノートの見きいっぱいに引かれた。

製図板もキャドもない現で、センチの尺と細いシャープペンシルだけで引かれたその図面には、彼女がこの週、曉の体から採取し続けた無数の測定値が、寸分の狂いもなく反映されていた。

モノコックのミリのねじれを、ホイールベースの距で割り戻し、角度のサインとコサインを算して、ディストリビューターの取り付け軸のを、正確に『へ〇・ミリ、へ・ミリ』オフセットさせる偏芯ブッシュの設計図。

田はその複雑な角関数の計算を、何度も、何度もノートの余に計算でやり直していた。全く同じ計算結果が回連続で致するまで、決して次の程へもうとはしなかった。

鉄を削り始めてから、の空気の匂いと音が、完全に変した。

キィィィィン――という、バイトの超チップが回転する鋼材にい込む鋭利な音が、のいトタン井に反響した。

削りされた細くい鉄の切が、まるで美しい螺旋の彫刻のようにチャックの元へとい落ちていく。激しい摩擦を帯びた切の根元は、空気に触れて鮮やかな青に焼けていた。

却のための溶性切削油がでジュウジュウと蒸発し、煙となってちり、古い特の埃と錆の匂いを押し流して空を満たしていった。

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