"百五十七名の命、ある農婦の通信" 第10話
あなたは、報以のものを私たちにくれました。……コックピットで絶望に呑まれかけていた、無線から“アイアンハンド”というコールサインが聞こえた瞬、私のに『まだ助かるがある』という猛烈な信がまれたんです。あの防林を越える最の瞬まで操縦桿をさずにいられたのは、あなたの確信に満ちた声があったからです」
田は度言葉を切り、胸元にを当ててく息を吸い込んだ。
「……全員が、自分ので歩いて脱しました。も欠けることなく」
真理の表が、初めて微かに緩んだ。
「ええ……本当によかった」
その、畑のあちこちから、にまみれた乗客たちが真理の元へと歩み寄ってきた。 最初に真理のにみたのは、いブラウスの袖を煤で汚した、若い女性だった。 12列A席の医師だった。 彼女の瞳は澄み渡り、真理のだらけのを、自らの両で包み込むようにしてく握りしめた。
「……患者たちが、待っているんです」
医師の声は静かだったが、その奥底から溢れる謝のが、真理ののひらを通じて伝わってきた。
「アジアの、さな島の診療所です。島には私しか医師がいなくて、私の帰りを首をくして待ってくれているお寄りや子どもたちがたくさんいるんです。……あなたが命を繋いでくれたおかげで、私は彼らの元へ帰ることができます。
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本当に……本当にありがとうございました」
医師がくをげると、そのろから、しっかりとを繋ぎった組の老夫婦がみてきた。 18列の茂と富子だった。 茂のい皺が刻まれた頬には幾筋もの涙の跡があり、彼は照れくさそうにそれを袖で拭いながら、真理ので何度もをげた。富子はもう片方ので、スマートフォンの画面を真理に見せた。そこには、青いおくるみに包まれて無に眠る、まれたばかりの赤ん坊の写真が写しされていた。
「初孫の、(たいき)というんです」
富子の声が震えていた。
「に、札幌の病院でまれたばかりで……まだ度も、この腕で抱いてあげたことがなかったんです。今、初めて会いにくはずでした。……これで、あの子を抱っこしてやることができます。お父さんとで、あの子の顔を見にくことができます」
茂が無言のまま、真理のを両で力任せに握りしめ、ボロボロと粒の涙をこぼした。
そして、混みをかき分けるようにして、のが真理の正面へと歩み寄ってきた。 24列A席の藤崎健太だった。 歳のは、だらけの運靴で切り株を踏みしめ、背筋をピンと伸ばして真理を見げた。恐怖で震えがりそうになるのを必に堪え、たちに対して勇敢であろうとする、男の子特の精杯のち姿だった。
「……母さんが、空港で待ってるんだ」
健太は、し掠れた声で言った。
「こんなことがあったってったら、きっと腰を抜かして泣いちゃうとう。すごく配性だから」
真理は膝にを当て、の目線にわせて屈み込むと、柔らかく微笑みかけた。
「丈夫よ。あなたの元気な顔を見たら、お母さんは泣いたに、世界で番きな笑顔を見せてくれるわ」
健太は力く頷いた。そして、真理がこの先、何経っても決して忘れることのない言葉を、誇らしげににした。
「……あのね、隣のおばあちゃんが、酸素マスクの着け方が分からなくてが震えてたんだ。だから僕、陸するに内の画面で流れてた全ビデオの通りに、ゴムバンドを引っ張って着けてあげたんだよ」
はし照れくさそうにを擦った。
「あのビデオ、いつもつまんないなーってってたけど……ちゃんと見ておいて、本当によかった」
真理は目を見張り、それから腹の底から突きげるような、からの温かい笑い声をげた。
「ええ、本当にそうね。それは世界で番素らしい判断だったわ、健太君」
健太は誇らしげに胸を張り、眩しいような笑顔を浮かべると、の乗客たちの方へと元気に駆け戻っていった。
事故の発から分も経たないうちに、勝の静かな農は赤灯の群れで埋め尽くされた。
警察、消防、陸自隊の救助部隊、そして国交通省の運輸全委員会(JTSB)の航空事故調査官たちが、数台の両を連ねて畑を埋め尽くした。