"七通の退職届と八十件の着信" 第33話
私は背のを振り返らなかった。振り返らなくても、彼らがそこに誇りくっていることが分かっていたからだ。
「腕のある職は全員そちらへくともおっしゃいました。けれど、あなたが数にすら入れなかったこのが、あなたの半の朝を作っていたのです」
川は俯き、固く目を閉じた。
「父はよく言っていました。『俺がんだら終わる技術なら、それは会社の技術じゃない』と。父がくなっても、このの技術は何つ終わっていません。械も、台たりとも売りません」
川はい沈黙の、掠れた声で絞りした。
「……俺は、これからどうすればいいんだ……」
「社ごっこ、とおっしゃいましたね」
私は川が投げつけた言葉を、静かに返した。
「ごっこでも、私はこの会社の社です。私が守るのは、私の会社の社員だけです。川さんがこれからどうされるかは、川精の社である川さんご自でお決めください」
川はゆっくりとちがった。その背は、かつてとして君臨していた男とはえないほど、さく丸まっていた。
私は川に背を向け、のに向き直った。
「アンさん、フックさん、ホアンさん」
が背筋を正した。
「残ってくれて、本当にありがとう。でも私は、お父さんの恩義だけで、あなたたちをこの会社に縛り付けたくないの」
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ホアンが何か言おうとしたが、私はで優しく制した。
「恩で縛るような経営をしたら、それこそお父さんに国で叱られるわ。だから、あなたたちの卓越した技術に見う、正当な役職とお料を支払います」
私は父の事案のを広げて見せた。
「付で、アンさんを製造リーダーに任命します。フックさんは産技術責任者、ホアンさんは品質管理責任者です。来のまで待たずに、お父さんが遺した計画通りにめます」
静寂の、アンが真っ先にをいた。
「はい。やります」
い返答だったが、その瞳にはいが湛えられていた。アンはに川の帳で突かれた胸元に、そっと掌を当てていた。
「ありがとうございます。完全に理屈が通っています」
フックが鏡をして目を押さえた。
「社。私たちは……恩ではなく、プロの仕事としてここに残ります。先代社に、そう誓います」
ホアンが々とをげた。
川はその景を呆然と見つめた、父の作業着が掛かった社の窓に向かって、く、くをげた。の歳を詫びるような、いいお辞儀だった。
顔をげた川は、誰とも目をわせることなく、平野くんのの助席へと乗り込んだ。は夕のへと、静かに消えっていった。
その夜、私たちは事務所に集まった。
ホアンがあの分いファイルを私に差しした。
「社、これを預かってください。これはもう、約束の役目を終えました」
私はそのファイルを父のデスクの最段に戻し、真鍮の鍵をカチリとかけた。
アンはクリアファイルに挟まれた、目で途切れた父の最の『本の段取り』をじっと見つめていた。
「から、朝番の械の数字は、僕が自分できます」
「計算は、僕がします」
フックが即座に応じた。
「測定は、私が毎朝半にやります」
ホアンが笑った。
父が半続けてきた朝の儀式は、翌朝からも全く同じに始まった。ただ、に数字をき込むのが、父のから、のしい職たちのへと受け継がれただけだった。
川精のそのは、取引先や平野くんを通じて、しずつに入ってきた。
初旬、産栄計測は川精との規取引座の設を正式に見送った。
扇原製作所の試作部品は、再製作のロットも穴ピッチ公差がわず、取引は完全撤回となった。扇原の購買担当者は、そののうちに森精へ産を持ってをげに訪れた。
「森社、どうかもう度、うちの部品を削っていただけないでしょうか。腕利きの職がいればモノができると、私もい違いをしておりました……」
応接の子でや汗を拭う担当者に対し、私はフックたちと程を確認したで、正式に適正価格で仕事を引き受けた。