"七通の退職届と八十件の着信" 第27話
「……そのれた個は、どうするの?」
ホアンは迷うことなく答えた。
「良記録データベースに登録し、赤い識別タグをつけて適品置に隔します。そして……産栄計測の野課にも、程の途で個の寸法れが発した事実を、包み隠さず報告します」
「えっ……報告するの? 納品する個ので起きたことだし、黙っていれば分からないんじゃないの……?」
からた瞬、私は自分の言葉の浅ましさに戦慄し、息を呑んだ。
ホアンは静かに、しかし毅然と首を横に振った。
「先代社なら、失敗したことよりも、失敗を隠して嘘をつく方を絶対に許しませんでした」
その言に、私の顔は恥ずかしさでカッとくなった。
数字の辻褄をわせるためなら、都な真実はに葬る――信用庫代、そうやって飾をね、最終に破滅していった企業を、私は誰よりも軽蔑していたはずだったのだ。
「……ごめんなさい。野課には、私から包み隠さず話するわ」
そのの作業はいったん断された。
翌朝、アンは始業のずっとに勤し、にれた部品と、そのに加された部品を恒温で徹底に再測定した。晩かけて温度に完全に馴染ませた状態での精密測定データを元に、フックが号の変位補正マクロを完璧にき換えた。
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アンは分な運転をった、朝番の試し削りを個だけった。
次元測定にセットしたホアンが、固唾を呑んでモニターを見守る。
「……入りました! 許容公差の央値、プラスマイナスゼロです!」
ホアンが叫んだ瞬、は顔を見わせ、同にきく息を吐きした。
私には、プログラムのコードの何がどう修正されたのかは分からない。けれど、が互いの技術を寸分の疑いもなく信じい、データをパスしって課題を克したことだけは、痛いほど理解できた。
私は野課に話を入れ、昨膨張によって個の寸法れがたこと、原因を特定してプログラム補正を完したこと、良品は隔保管していることを詳細に報告した。
「ご報告ありがとうございます。その正処置の記録も、納品の検査成績にそのまま添付していただけますか?」
野課の声には、責めるような響きは切なく、むしろ完全な透性に対するい敬が込められていた。
それからの、は午の昇をあらかじめ見越して加スケジュールを綿密に調し、昼休みけにはフックが算する午専用の補正値を入力しながら、極限の集力で削り続けた。
私は昼に内の取引先を回ってをげ、夜は恒温でホアンから検査成績の読み方のほどきを受けた。
「この線が許容公差の限と限です。真んの赤いラインに測定点が集まるほど、精度のい美しい部品です」
ホアンの指先がのを滑るたび、ただの無質な数字の羅列が、ミクロン単位で息づく属の体として私の目にち現れてきた。
数字の向こう側には、必ずそれを作ったの汗と誇りがある――父が私に教えようとしていた真実の欠片が、ようやく胸に沁み渡っていた。
の曜の夕暮れ。
恒温のい防音ドアがき、ホアンが際きな声を張りげた。
「個……全数、公差央値に入りましたッ!」
に、拍と歓声が響き渡った。
そのの昼、事務所の郵便受けに通の封が届いていた。
差は『川精 川正』。
には、乱暴に千切られた便箋が枚だけ入っていた。
『号で削っていた部品の加条件は、俺がかけて築きげたものだ。勝に使うことは断じて許さん。もし使っているなら、法廷にてるところにるぞ』
圧がすぎて、が所々破れかけていた。
私はめた目でその便箋をつ折りにし、ノートのに挟み込んだ。
号の加データは、父とがかけて正当に記録した会社の財産だ。るところにて困るのは、業務横領紛いので顧客を奪おうとした向こうの方だった。
、曜。
私はホアンを助席に乗せ、完成した個の部品を積んだ軽自で産栄計測の本社へ向かった。