"七通の退職届と八十件の着信" 第22話
変更した理由、付、シミュレーション結果がすべて紐付いて保されています」
さらにフックが画面を切り替えると、過の良発記録と正処置のデータベースが表示された。自らがした失敗すら、切隠すことなく詳細に記録されているのを見て、野課は嘆の声を漏らした。
「自分たちの過の失敗まで、すべてオープンに残されているのですね」
「はい」
フックは鏡を押しげ、誇らしげに答えた。
「失敗の記録を消してしまうと、は必ず同じ失敗をもう度繰り返しますから」
最に、は温度に厳密に保たれた恒温検査へと入った。
ホアンが、先試作した個の測定データと検査成績を提示した。
「この部品で最もな箇所の基準穴ピッチですが、個とも許容公差のど真ん、央値に入っています。加の変位を予測し、個加するごとに測定をい、寸法のズレの傾向を監して補正値をフィードバックします」
野課は数分、無言のまま検査成績をい入るように見つめていた。
そして、ふっと顔をげ、アンをじっと見つめた。
「……アンさん、でしたよね」
アンが驚いたように目を瞬かせた。
「の、私が見学に伺った、号のでこの部品を削っていたのは、やはりあなたでしたね」
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「はい」
「あのは、川が横から遮ってお話しされたので、ご本からは直接お話を伺えませんでした。でも、あまりにも美しい削り肌だったものですから、私、帳にお名だけメモを残していたのですよ」
野課は帳のページをめくって見せてくれた。そこにはの付とともに、几帳面な字で『アンさん』とカタカナで記されていた。
「実は今朝、川さんから私の携帯に直接お話をいただいたのです。『森の検査は国任せでいい加減だから、厳しく見た方がいい』と忠告めいたことをおっしゃっていました」
私はわず息を呑んだ。どこまで卑劣な男なのかと、りで目眩がした。
しかし、野課は帳をパチンと閉じ、れやかな笑みを浮かべて私に向き直った。
「ですので、極めて厳格に見させていただきました。そので、品質保証責任者として正式に申しげます」
野課は背筋を伸ばし、はっきりと告げた。
「製造程変更の申請を、承認いたします。実監査の結果は『完全格』です。、完璧な個の納品をよりお待ちしております」
その瞬、隣にっていたホアンが「ふぅぅっ」ときな息を吐きした。フックは鏡をし、指の腹で目をく押さえていた。アンは表を崩さなかったが、々とをげるそのの先が、真っ赤に染まっていた。
「ここまで完璧にデータとトレーサビリティが備されている町は、弊社の協力企業のでも滅にありません。森さん……お父様は、本当に素らしい技術とを遺されましたね」
野課の温かい言葉に、私は声がず、ただ腰をく折って涙を堪えることしかできなかった。
監査がすべて終わり、刻は午半を回っていた。
野課たちをので見送ろうと事務所をた、まさにそのだった。
キーッというなブレーキ音を響かせ、見覚えのあるいワゴンがの鉄を乱暴にくぐって入ってきた。
運転席からりてきたのは、やつれきった顔の岩佐さんだった。そして助席のドアがき、姿を現したのは――川正だった。
胸に『川精』との派な刺繍が入った、真しい紺の作業着を着込んでいた。
川は内を値踏みするように見回し、の脇につ野課の姿を認めるなり、瞬だけぎょっと表を張らせた。しかし次の瞬には、取引先向けの媚びた笑いを顔に張り付け、揉みをしながら股でづいてきた。
「おやおや、これは産栄計測の野課! わざわざこんな吹き溜まりのまで、ご苦労様でございます!」
野課はややかな目で川を瞥し、会釈だけを返してをかなかった。
私はのに割って入るように、歩にみた。
「何の御用ですか、川さん」