"七通の退職届と八十件の着信" 第13話
「るわけねえだろうが。言ったら止められるに決まってる。俺たちだって馬鹿じゃねえんだ」
父がらないところで、もの、最も信頼し、腕として処遇してきた男が、背から刃を突きつける準備をしていた。
川は私の背につのベトナムに、顎をしゃくってみせた。
「おい、おらもな、どうしても付いてきたけりゃ来てもいいぞ。ただし、番っ端の見習いの当からスタートだがな。あっちは優秀な本の職だけで分回るから、慈善事業で雇ってやるようなもんだがな」
は、誰としてピクリともかなかった。返事すら返さず、ただ静かに、凛とした瞳で川を見据えていた。
「……あっそ。じゃあ、せいぜいうちの最械を錆びつかせないようにな。号を完璧に回せるなんざ、この域には俺のにおらんのだからな」
川はそう吐き捨てると、平野くんの肩を乱暴に叩いた。平野くんは瞬だけ、アンたちの方を振り返り、何かを言いかけようとしてをいたが、結局何も言わずに俯いた。
ザッ、ザッ、と砂利を踏みしめる分の音が、鉄のへとざかり、やがて消えた。
残されたのが、急激に、寒々しいほど広くなったようにじられた。
いた社員のうち、残ったのはたったの。
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いつもならに鳴り響いているはずの、主軸が速回転する切り音も、切削油のエアーが抜けるプシューという乾いた音も、何つ聞こえない。完全なの静寂が支配していた。
私はの力が抜け、ふらふらと事務所のパイプ子に崩れ落ちた。
も無言のまま、静かに事務所へと入ってきた。
誰もをかない。壁に掛けられた古計の秒針が刻むカチ、カチという乾いた音だけが、障りなほどきく響いていた。
「……みんなも、川さんのしいにっていいんだよ」
ようやく私の喉から絞りされた声は、自分でもけないほど細く震えていた。
「どうしてですか?」
ホアンが、穏やかな、しかし芯の通った声で聞き返してきた。
「だって……この会社、もう……」
その先をにすることができなかった。
職がも気に抜け、残されたのは械の識など何つ持たない代の女社と、国労働者だけ。末に支払わなければならない莫な形や件費の面すら、今の私には見当もつかなかった。
私ののでは、信代の徹な計算式が勝に速回転を始めていた。
産栄計測から請け負っている精度部品個の納期は、来週の曜。の取引先からの注文も、今だけで件く残っている。分の件費が浮いたところで、作械をかせるが物理に消え失せてしまったのだ。
もし私が今でも信用庫の融資窓に座っていたら、こんな絶望な状況に陥った町には、円の追加融資も通さないだろう。
「まだ、会社あります」
に、アンが言った。
普段は極めて数がなく、を表にさないアンが、きな黒い瞳でまっすぐに私を見つめていた。
「械もあります。仕事も、あります」
アンは言ずつ、己の魂を込めるように言葉を区切った。
「僕たちも、います」
フックがアンの隣にみて、力く言葉を添えた。
その瞬、張り詰めていた私のの糸がぷつりと切れ、両で顔を覆って机に突っ伏した。涙が指の隙からとめどなく溢れし、止まらなかった。
は何も言わず、私が泣き止み、顔をげるまで、じっとそのに佇んで待っていてくれた。
やがて、私が涙を拭って顔をげると、ホアンが静かに歩みし、事務所の壁に掛けられたきなホワイトボードのにった。
「社。残っている注文を、全部ここにいてください。納期のい順に」
私は震える指でホワイトボード用の黒マーカーを握り、受領と注文票をめくりながら、取引先名、部品名、数量、納期を片っ端からき殴っていった。
件い注文の文字が、いボードの端から端までを埋め尽くした。
き終えると、今度はフックがマーカーを受け取り、それぞれの部品の横に、使用する作械の名称を際よく割り振っていった。