"義母を無償介護した3年、夫は私の名義で毎月15万円を受け取っていた" 第16話
修平さんの百万円は、美保さんに対する債務履、および私文偽造・同使の法為です。これらはすべて、刑事・民事の双方で責任を追及できる事案です」
リビングに、針が落ちても聞こえるような静寂が落ちた。
修平も理恵も、もはや顔をげることすらできない。 互いに責任を擦り付けう気力すら、完璧な数字と類のには残されていなかった。
そのだった。
「……お義母さん」
私が静かに呼びかけると、子の義母が、ゆっくりと首をもたげた。 その瞳には、い疲弊と、隠しきれない惨めさが滲んでいた。
「つだけ、聞かせてください」
私は義母の目を、まっすぐに見つめた。
「私はこの、何度もあなたに言いましたよね。『今もオムツ代で私の料から万円持ちしになった』『タクシー代をて替えたから、精算してほしい』と、領収を見せながら、何度も訴えました。……なぜ、度も確認してくださらなかったんですか?」
義母の唇が、さく震えた。
「毎万円ものをしているとっていたのなら、なぜ、嫁がドラッグストアのレシートを握りしめて困っている姿を見て、おかしいとわなかったんですか? 私が嘘をついて、におを毟り取ろうとしていると……本気でっていたんですか?」
義母は線を彷徨わせ、々しく首を振った。
広告
だが、そのから漏れてきたのは、言い訳ですらなく、このに巣っていた『本音』の澱だった。
「……疑いたく、なかったんだよ」
掠れた、老いた声だった。
「修平がね……『美保はもっとをせって欲張ってるんだ』って、言うから……。私は、そう信じたかったんだ。護師の嫁がいるんだから、うちはのよりがりで、くてもらえるのが当たりだって……そういたかったんだよ」
臓の奥が、たく凍りついた。
らなかったのではない。 見たくなかったのだ。
息子がを着している能性に気づきながら。 嫁が銭を切り、夜勤けの体を引きずって汚物を片付けているのを見ながら。 『護師の嫁がいるのだから、がりに介護されて当然だ』という勝な特権識と甘えが、義母の目を曇らせ、を塞がせていたのだ。
「都が良かったんですね」
私の乾いた言に、義母は息を詰まらせ、両で顔を覆った。
「自分が番くて、実の息子の嘘に寄りかかって……番都よく使える私を、悪者に仕てげていた方が、楽だったんですね」
義母は何も言い返せず、肩を震わせてただ静かに涙をこぼした。 そこには、かつてインターホン越しに私を酷に締めした『威厳ある』の姿は、どこにもなかった。 ただ、自分の都のいい嘘に溺れ、実の子どもたちにい物にされていた、れな老がいるだけだった。
だが、義母はそこで壊れたわけではなかった。 をきてきたプライドの、最の残滓が、義母の体をゆっくりと震わせた。
義母は涙を拭い、麻痺の残るで子の肘掛けをく握り直すと、隣に縮こまっている修平と理恵を、射抜くような鋭い線で見据えた。
「……理恵」
義母の声は、く、をうようにたかった。
「は、はい……お母さん……」
「修平」
「……母さん……」
義母は懐から、古い革の提げバッグを取りした。 震えるでファスナーをけ、から取りしたのは――義母自が隠し持っていた、実印と、再発の続きを済ませたばかりの真しい定期預の通帳だった。
ドサリ、とテーブルのにそれが置かれる。
義母の濁った瞳に、かつてない激しいりのが宿っていた。
「私の介護をダシにして、私の体をダシにして……して分けにした私のお、そして美保さんに払うはずだったお」
義母は文字文字、噛み締めるように、に向かって言い放った。
「あんたたち、今すぐ、円残らず……全部、吐きしなさい」
弁護士のによって、通の類がテーブルに並べられた。
に黒の活字。 の切を排除した、徹な数字の羅列。 『案』と題されたその面をに、リビングには誰の呼吸音も響かないほどの静寂が落ちていた。
「それでは、清算の最終条項を確認します」
先がボールペンの先で、項目をつずつ追っていく。