"義母を無償介護した3年、夫は私の名義で毎月15万円を受け取っていた" 第12話
それは、私への謝罪の涙ではない。 自分が盲目に信じ、し、甘やかしてきた実の子どもたちに、きたまま肉を削ぎ取られていたという、耐え難い屈辱と絶望の涙だった。
「それなのに……あんたたちは……! 美保さんがを欲しがってると嘘をついて、私に美保さんを憎ませて……私の目の届かないところで、で分けにしていたのかい?!」
「母さん、頼むから落ち着いてくれよ! で説するから!」
修平が叫びながらちがろうとした。 しかし、その、渡辺さんが静かに、しかし鋼のようにい声で割って入った。
「様。で、では済まされません」
渡辺さんは元の記録ファイルを閉じ、テーブルのにペンを置いた。
「本確認された事実は、極めて刻です。まず、介護者であるお義母様の財産が、透な名目で親族によって期にわたり流していた疑いがあること。そして、本来キーパーソンとして介護体制を支えるべき美保様が、虚偽の受領によって当な扱いを受け、居から締めされていること」
渡辺さんの線が、修平と理恵を射抜くように捉えた。
「域包括支援センターとして、この状況を見過ごすことはできません。齢者に対する経済虐待の疑いも含め、しかるべき関への報告、および権利擁護の観点から弁護士会への相談を推奨させていただきます」
広告
「ぎょ、虐待……?! 渡辺さん、そんな袈裟な!」
修平が鳴のような声をげた。 世体。会社の板。 その言葉がた瞬、夫のので何かが激しく警鐘を鳴らしたのだろう。 顔面を蒼にし、や汗を流しながら私の元へと擦り寄ってきた。
「美保! おい、美保、頼むよ! 悪かった、俺が悪かったから! 渡辺さんに言ってくれよ、ただの族の勘違いだったって! なあ?!」
夫のが、私のコートの袖に伸びてきた。 そのを、私はミリの躊躇もなく、たく払いのけた。
「触らないで」
「美保……」
「勘違いじゃないわ。数字も、領収も、全部事実よ」
私はバッグから、弁護士から預かってきた通のい封筒を取りした。
「これは、私の代理である弁護士からの受任通です。修平さん、あなたがにわたって私の名で受領した、計百万円の介護補填。および、私が自腹でて替えた万千百円の介護実費。その全額の清算について、法な協議を求めます」
封筒を、テーブルの夫の目のに置いた。 夫は、まるで猛毒のサソリでも見るかのように、そのいを見つめてずさりした。
「そして理恵さん」
私は、今にも倒れそうに震えている義妹に向き直った。
「あなたがお義母さんの座から虚偽の名目で引きし、着していた百万円。これについては、お義母様ご自がどう判断されるかですが……私は渡辺さんと共に、お義母様の通帳の全履歴の示と、成見制度の利用も含めた財産調査を申し入れます」
「そんな……お母さん! 助けてよ、お母さん!」
理恵が義母に縋り付こうと膝をついた。 だが、義母はそのを、麻痺の残るで激しく叩き落とした。
「……触るんじゃないよ」
義母の声は、もはや涙声ですらなかった。 のすべてが燃え尽き、たいだけが残ったような、底れぬ拒絶だった。
「私の通帳を、返しなさい。今すぐ、返しなさい……!」
リビングに、理恵のすすり泣きと、夫の荒い呼吸の音だけが響いていた。 にわたってこのを支配していた『親孝な息子と娘、欲張りで気の利かない嫁』という欺瞞のメッキが、完全に剥がれ落ちた瞬だった。
私は、ゆっくりと子からちがった。 コートのボタンを留め、鞄を肩にかける。
「美保……お、どこへくんだよ……」
にへたり込んだ夫が、掠れた声で私を見げた。 その瞳には、かつて私を締めしたの傲さなど微もなかった。 ただ、すべてを失うことへの怯えと、れなすがりつきだけが浮かんでいた。
「ホテルに戻るわ。ここはもう、私のむ所じゃないもの」
「待てよ……母さんのオムツはどうすんだよ! 今夜の飯は! 俺じゃ無理なんだよ!」
夫のそのけない叫びを背に受けながら、私は度もち止まることなく、リビングのドアをけた。