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"義母を無償介護した3年、夫は私の名義で毎月15万円を受け取っていた" 第9話

そして、玄関のにを踏み入れた瞬、を突いたのは――烈なアンモニア臭だった。

換気もろくにされていない淀んだ空気。 廊の隅には、使用済みのパンツが無造作に突っ込まれたゴミ袋がをけたまま放置されている。 私がいた頃には、度たりとも漂わせたことのない、活の崩壊の臭いだった。

「……渡辺さん、どうぞ。美保、おもくがれ」

夫は私と目をわそうともせず、吐き捨てるように言ってリビングへ背を向けた。 渡辺さんは無言で廊のゴミ袋を瞥し、眉にい皺を刻みながら私のに続いた。

リビングの引き戸をけると、異様な空気がそこを満たしていた。

ダイニングテーブルの奥、子に座った義母が、鬼のような形相で私を睨みつけていた。 髪は乱れ、着ているカーディガンの胸元には、べこぼしの染みが乾いて張り付いている。 その隣には、休暇を取らされたのだろう、眉をつりげた理恵が腕を組んで座っていた。

「……よくも恥を晒しに来てくれたわね、美保さん」

義母の第声は、く、濁った威嚇だった。 その元には、使い古された学ノートと、何枚かのレシートが乱暴に叩きつけられていた。

「お義母様、こんにちは。担当の渡辺です。本は緊急のカンファレンスということで――」

「渡辺さん、あんたは黙ってて!」

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義母は渡辺さんの挨拶を引に遮り、麻痺の残るでテーブルをバンと叩いた。

「この嫁の顔を見なさいよ! 族を放りしてホテルに逃げ込んで、のケアマネに告げして! 自分がどれだけ贅沢な分か、これっぽっちも分かってないんだわ!」

「贅沢……ですか」

私が静かに尋ねると、義母は待ってましたとばかりに、元のノートをバサリと広げ、私に向かって突きした。

「当たりでしょうが! 私はね、あんたに毎、万円も払ってきたのよ!!」

リビングの空気が、凍りついた。

渡辺さんが、隣で微かに息を呑む音が聞こえた。 理恵の肩が、ビクッと自然にねがった。

義母は興奮のあまり唾をばしながら、ノートのページを指先で激しく叩いた。

「万のお遣いじゃりないって言うから、毎プラスして、あんたが配する介護の支援費や用品代として、毎万! 欠かさず理恵を通じてあんたに渡してきたんじゃないの! それなのに何だい、湿布枚買うのにも『おがない』だの『持ちしだ』だの文句ばっかり言って! 万も貰っておきながら、まだ私からを毟り取る気かい?!」

叫び終えた義母は、肩で息をしながら勝ち誇ったように私を見据えていた。 その隣で、夫の修平は気まずそうに線を泳がせ、理恵は真っ青な顔をして俯いている。

私は、義母が突きしてきたノートを見つめた。 そこには、歪んだ義母の跡で、毎の記録が几帳面に記されていた。

『令〇 美保さん介護謝礼 万円』 『同 美保さん配・自費支援及び特別用品費 万円』 『計 万円(理恵へ渡し、または座より振替)』

それが、過ヶにわたって、びっしりと並んでいた。

……万。 義母は本気で、私が毎万円ものを受け取って介護をしているとい込んでいたのだ。

「お義母さん」

私の声は、自分でも驚くほど徹に、静まり返ったリビングに響いた。

「今の言葉、渡辺さんのでもう度繰り返していただけますか? 私は毎、お義母さんから万円を受け取っていた、と」

「何回だって言ってやるわよ! ここにちゃんといてあるでしょうが! 理恵だって証だよ!」

義母が理恵の腕を引っ張った。 理恵は鳴にい息を漏らし、弾かれたように顔をげた。

「ちょ、ちょっとお母さん、今はそんな話……」

「何がそんな話だい! あんたが毎、私の通帳から引きして、兄さんと美保さんに渡してくれてたんだろうが!」

「理恵さん」

私はトートバッグから、あの分いクリアファイルを取りし、テーブルの真んに々しく置いた。 ドサリ、という鈍い音が響く。

「私がこのでて替えた領収です。

総額万千百円。そのすべての付、購入した舗、品目、そして使用目が記載されています。お義母さんのパンツ、清拭剤、処方薬の自己負担分、通院の民救急のレシートです」

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